木星の数十倍もの質量を持ちながらも、中心で水素の核融合が始まるほどには重くない、恒星と惑星の中間にあたる「褐色矮星」。すでに存在が知られていた褐色矮星を調べたところ、実は2つの褐色矮星が互いを周回し合う連星だったことが明らかになりました。

■全体では3つの褐色矮星からなる三重連星だった

褐色矮星の連星「CFBDSIR 1458+10」を描いた想像図(Credit: ESO/L. Calçada)

今回観測されたのは「てんびん座」の方向およそ120光年先にある「2M1510A」です。2M1510Aは誕生から4000万~5000万年ほどが経った褐色矮星とみられています。

Amaury Triaud氏(バーミンガム大学、イギリス)らの研究チームが2M1510Aを詳しく観測したところ、ほぼ同じ質量(木星の40倍前後)の2つの褐色矮星が、約21日という短い周期で互いを周回する連星だったことが判明しました。「2M1510Aa」および「2M1510Ab」と呼ばれている2つの褐色矮星は水星よりも小さな軌道(軌道長半径は約0.06天文単位)を描きながら互いを周回しているため、望遠鏡で見分けることはできません。

研究チームでは、2M1510Aは250天文単位(太陽から地球までの250倍)ほど離れたところにある別の褐色矮星「2M1510B」と連星を成しており、今回の発見によって全部で3つの褐色矮星からなる三重連星だったことが明らかになったとしています。

■たまたま選ばれたテスト観測のターゲット

テスト観測中に2M1510Aを観測したSPECULOOSプロジェクトの望遠鏡群(Credit: tau-tec GmbH)

Triaud氏らの研究チームは最初から褐色矮星の連星を探していたわけではありません。2M1510Aは、ヨーロッパ南天天文台(ESO)のパラナル天文台にある「SPECULOOS(スペキュラース)」プロジェクトの望遠鏡によるテスト観測中のターゲットとして、たまたま選ばれただけでした。

しかし、このテスト観測において、90分間に渡る2M1510Aの減光が確認されました。この減光が「食(しょく)」(ある天体が別の天体に隠される現象)によるものだと考えた研究チームは、同じパラナル天文台にある「超大型望遠鏡(VLT)」や、ハワイのW.M.ケック天文台にある「ケック望遠鏡」を使って追加観測を実施。2M1510Aのスペクトルを分析(虹の色のように、電磁波を周波数ごとに分けて調べる方法)することで、2M1510Aが連星であると確認されました。

なお、スペクトルの分析によって連星だとわかるものは分光連星と呼ばれており、なかでも連星を成す両方の星のスペクトルが観測されるものは二重線分光連星と呼ばれています。褐色矮星の連星そのものはこれまでにも発見例があるものの、研究チームによると褐色矮星の二重線分光連星はこれまで「2M0535」だけが知られており、2M1510Aはこれに次ぐ2つ目の発見例になったということです。

 

Image Credit: ESO/L. Calçada
Source: W.M.ケック天文台
文/松村武宏

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