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コーネル大学は7月10日、植物の歴史に着目した地球外生命体探査の方法を論じたO’Malley-James氏らの研究が、7月9日付でAstrophysical Journal Lettersに掲載されたことを発表しました。

地球の歴史における植生の変化を示した図。右から「20億年前(シアノバクテリア)」、「10億年前(地衣類)」、「5億年前(シダ類)」、「現在」の順

生命体の探査対象となるのは、近年続々と発見されている太陽系外惑星です。今回論文にまとめられた研究では、現時点で直接探査機を送り込むことができない系外惑星において生命体が誕生しているかどうかを判断するために、赤外線を使った植物の検出方法を検討しています。

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地球で繁栄している植物には、可視光線や赤外線の一部を反射する性質があります。植物の葉などが緑色に見えるのもそのためですが、近赤外線の一部の範囲(700nm前後)では反射率が急激に変化することが知られています。「red edge(レッドエッジ)」と呼ばれるこの範囲の赤外線を使うと農地や森林の状態を知ることができるため、農業や植物を対象とした研究などの分野で活用されています。

レッドエッジの範囲の赤外線は、系外惑星での生命体探査にも活用されることが期待されています。系外惑星が反射した赤外線を観測したとき、もしもレッドエッジの範囲に地球の植物と同じような特徴が見つかれば、生命体が繁栄していると判断する一つの証拠となるからです。

今回の研究では、地球の歴史における植生の変化を振り返ることで、系外惑星に対するレッドエッジを使った生命体探査の手法をステップアップさせています。

たとえば、地球ではおよそ5億~10億年前までは、主に地衣類(見た目がコケに似ている、菌類と藻類の共生体)が繁栄していました。地衣類よりも前、およそ20億~30億年前には、広大な海洋でシアノバクテリアが繁栄する時代が続きました。

O’Malley-James氏らは、こうした有史以前の植物相ではレッドエッジにどのような特徴が現れるかを検討しました。その上で、地球の長い生物史における植生の変化を「カンニングペーパー」とすることで、探査を実施した系外惑星に植物は存在しているのか、もしも存在していればどのような植生が広がっているのかが予想可能になるとしています。

地球が唯一の手本である以上、生命体の兆しをキャッチするためのあらゆる可能性を網羅したカンニングペーパーを準備することは、今後打ち上げられる「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡などを使った系外惑星探査において、謎解きの重要なヒントとなることでしょう。

 

Image Credit: Wendy Kenigsberg/Cornell Brand Communications
http://news.cornell.edu/stories/2019/07/exoplanet-evolution-astronomers-expand-cosmic-cheat-sheet
文/松村武宏

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