パルサーの直径と質量を精密測定、ホットスポットの位置も初めて判明

恒星の超新星爆発によって誕生すると考えられている「パルサー」は、直径数十kmのサイズに太陽と同じくらいかそれ以上の質量が詰め込まれた、コンパクトで高密度な天体です。国際宇宙ステーション(ISS)に設置された観測機器を使ってその直径と質量をこれまでにない精度で測定することに成功したとする研究成果が、独立した2つの研究チームから発表されました。

※パルサーとは、パルス状の可視光線やX線、電波を発生する天体(Wikipedia

■直径26km弱で太陽1.3~1.4個分の質量を持つ

パルサー「J0030+0451」のホットスポットの位置を示した図。左はRiley氏ら(点形状と三日月形状が1つずつの計2つ)、右はMiller氏ら(点形状が2つ、三日月形状が1つの計3つ)による(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center)

 

パルサーとは、恒星の超新星爆発によって誕生した高密度の天体である中性子星のうち、電波や光(赤外線や紫外線も含む)、X線といった電磁波がパルス状に観測される天体のことです。

今回、パルサー「J0030+0451」(以下「J0030」)を精密に観測した2つの研究チームによる複数の論文が、The Astrophysical Journal Lettersに掲載されました。J0030は「うお座」の方向およそ1100光年先という地球から比較的近いところにあるパルサーで、1秒間に205回のペースで自転しています。

2017年7月から2018年12にかけて実施された各研究チームの観測の結果、J0030は直径25.4kmで質量が太陽の約1.3倍(アムステルダム大学のThomas Riley氏らによる)、または直径26kmで質量が太陽の約1.4倍(メリーランド大学のCole Miller氏らによる)であることが判明しました。パルサーの直径および質量としては、これまでで最も信頼できる値(不確実性は10%未満)となります。

南半球にだけホットスポットが存在する条件下でシミュレートされた、四重極構造を持つパルサーの磁場(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center)

 

また、各研究チームの観測によって、パルサー表面の一部が周囲より高温になっている「ホットスポット」の位置が初めて明らかになりました。J0030にはホットスポットが2つまたは3つ存在しており、そのすべてが南半球に集中しているようです。

ホットスポットはパルサーの磁場と密接に関連しています。そのため、想像図でよく描かれる棒磁石のような磁場を持っていた場合、ホットスポットは北半球と南半球に1つずつといったように、単純な配置をしている可能性がありました。しかし、J0030で確認されたホットスポットの位置は、パルサーが実際にはもっと複雑な磁場を持っていることを示唆しています。

従来のパルサーの想像図。青色で描かれているのが磁場(Credit: B. Saxton, NRAO/AUI/NSF)

■観測にはISSに設置された「NICER」を使用

Riley氏らとMiller氏らは、どちらもISSに設置されているNASAのX線観測装置「NICER(Neutron star Interior Composition ExploreR)」を使ってJ0030を観測しました。

NICERは、高密度であるために重力が強く、光(電磁波)の向きを大きく曲げてしまうパルサーの性質を利用した観測装置です。地球から見てパルサーの裏側に回り込んだホットスポットから発せられたX線は、パルサーの重力によって進む向きが曲げられて、その一部が地球に届きます。自転にともないX線が変化する様子を精密に測定すると、重力の強さをもとにしてパルサーの質量と直径を求めることが可能となります。

ただ、パルサーは高速で自転する天体なので(J0030の場合はおよそ4.87ミリ秒で1回転する)、その変化を精密に測定するには高い精度が求められます。NICERはX線の変化を従来の約20倍となる100ナノ秒(0.1マイクロ秒)の精度で捉える性能を有しており、パルサーの直径と質量を高い信頼性で測定することを実現しています。

ISSのトラス上に設置されているX線観測装置「NICER」(画像中央、蜂の巣状の構造を持つ箱型の装置)(Credit: NASA)

 

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Image Credit: NASA's Goddard Space Flight Center
Source: NASA / JAXA
文/松村武宏