NASAの火星探査車「キュリオシティ」(MSL:マーズ・サイエンス・ラボラトリー)などの活躍により、かつて火星の地表には液体の水が存在していたことが確実視されています。今回、その水がどのような水質だったのかに迫った研究成果が発表されました。

■pHは7前後でミネラル豊富、生命に適した水だった

ゲール・クレーターを満たしていた湖の想像図(Credit: Evan Williams, with data from the Mars Reconnaissance Orbiter HIRISE project)

金沢大学の福士圭介氏をはじめとした研究チームが取り組んだのは、7年前からキュリオシティが探査を続けているゲール・クレーターにかつて存在していた湖の水質復元です。かつてゲール・クレーターにはクレーターの外輪山から流れ込んだ小川によって湖が形成されたと考えられており、今もその地表には当時形成されたとみられるひび割れた堆積岩らしき岩が残されています。

キュリオシティの探査によって得られた堆積物のデータをもとに研究チームが水質の復元を実施した結果、およそ35億年前にゲール・クレーターに存在していた湖のpHは6.9~7.3の中性で、塩分は地球の海水の3分の1程度、そしてミネラルを豊富に含んだ水であったことがわかりました。

また、ゲール・クレーターの湖は流れ出る河川を持たず、地球の死海やカスピ海と同様に、流れ込んだ水が蒸発することで塩分やミネラルの濃度が徐々に濃くなっていったと考えられています。

そこで、湖水の塩分濃度が復元された値に達するまでの期間を推定したところ、100万年程度は継続して塩分やミネラルが供給され続けていたことも判明しました。つまり、最低でも100万年ほどは火星に温暖な期間があり、これらの成分を含む水が流れ込み続ける環境が維持されていたことになります。

■「地表に水があった惑星」から「地表で生命が誕生・生存し得た惑星」に

ゲール・クレーターの湖水(湖沼堆積物の間隙水)の水質復元結果を、地球の琵琶湖および海水と比較したもの(Credit: 金沢大学)

たとえ水が存在していたとしても、その水質が強い酸性やアルカリ性だったり、塩分が濃かったりすると、生命にとっては厳しい環境となってしまいます。今回の研究によって、過去にゲール・クレーターを満たしていた湖の水質が地球型の生命を寄せ付けないものではなく、生存に適したものだったことが初めて明らかになりました。

さらに、塩分やミネラルが長い期間に渡って濃縮する場所は生命の誕生に適しているとみられることから、ゲール・クレーターにあった湖はただ生存に適していただけではなく、そこで生命が誕生し得る環境だったとも考えられます。

発表によると、今回用いられた復元手法は、来年打ち上げ予定の火星探査車「マーズ2020」(NASA)や「エクソマーズ2020」(ESA/ロスコスモス)による探査結果でも利用可能とされています。ゲール・クレーター以外の場所における水質が明らかになれば、過去の火星全体の環境をより詳しく知ることにつながるはずです。

ゲール・クレーターに今も残る堆積岩とみられる岩(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)

 

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Image/Source: 金沢大学
文/松村武宏

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