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恒星「TOI-201」を公転する極端な軌道の褐色矮星と共存する2つの惑星

ESO(ヨーロッパ南天天文台)のMatías Jones氏を筆頭とする国際的な研究チームによると、NASA(アメリカ航空宇宙局)の系外惑星探査衛星「TESS(テス)」などの観測データから、恒星「TOI-201」の周囲において、非常にめずらしい特徴を持つ惑星系を発見したとする研究成果を発表しました。研究チームの成果をまとめた論文は、学術誌「Nature」に掲載されています。

長周期の褐色矮星と2つの惑星の発見

誕生してから約10億年と比較的若い恒星TOI-201の周囲には、すでに「TOI-201 b」と呼ばれる、公転周期約53日のウォームジュピター(温暖な巨大ガス惑星)が存在することが知られています。

INAF(イタリア国立宇宙物理学研究所)によれば、今回の研究において、新たに2つの天体が確認されました。そのうちの1つは、公転周期わずか5.8日の「TOI-201 d」で、スーパーアース(地球よりも大きな岩石惑星)とみられています。

もう1つは、公転周期が約8年(2881日)にもおよぶ、長周期の褐色矮星(恒星と惑星の中間の質量を持つ天体)である「TOI-201 c」です。TOI-201 cは木星の約16倍の質量を持つとみられていますが、注目はその彗星のような公転軌道で、軌道離心率0.62という極端にひしゃげた楕円軌道を描いているといいます。

研究チームによると、この褐色矮星はトランジット(恒星面通過)が観測され、かつ視線速度法によって質量が特定された天体としては、これまでに知られている中で最も長い公転周期を持っています。

TOI-201系を描いたAI生成のイメージ図、INAFのプレスリリースから引用。中央は褐色矮星「TOI-201 c」、その右側にウォームジュピター「TOI-201 b」、スーパーアース「TOI-201 d」が描かれている(Credit: INAF / generated with AI Gemini)
【▲ TOI-201系を描いたAI生成のイメージ図、INAFのプレスリリースから引用。中央は褐色矮星「TOI-201 c」、その右側にウォームジュピター「TOI-201 b」、スーパーアース「TOI-201 d」が描かれている(Credit: INAF / generated with AI Gemini)】

ほぼ同一平面上で揃った軌道面

今回の発見は、TESSによる「トランジット法」での一度きりの検出と、地上望遠鏡を用いた長期間にわたる「視線速度法」の観測を組み合わせることで実現しました。さらに、天体どうしの重力相互作用によってトランジットの発生タイミングがずれる「トランジットタイミング変動(TTV)」の分析も大きく貢献しています(手法については後述)。

通常、TOI-201 cのように重くて極端な楕円軌道を持つ天体が存在すると、その強い重力がもたらす擾乱によって周囲は力学的に不安定になり、他の惑星の軌道は弾き飛ばされてしまいます。TOI-201系の場合は、太陽から火星までの距離よりも遠い領域が不安定になっています。

ところがTOI-201系では、内側から順にスーパーアース(TOI-201 d)、ウォームジュピター(TOI-201 b)、褐色矮星(TOI-201 c)の軌道面が、ほぼ同じ平面上で揃っていることが明らかになりました。これは、褐色矮星の強い重力の影響下にあっても、原始惑星系円盤(惑星の材料となるガスや塵の円盤)の最も内側の狭い領域で惑星が形成され、安定して生き残ったことを示唆しています。

惑星形成のさらなる理解に向けて

今回の成果は、惑星の形成に関するこれまでの“常識”に疑問を投げかけています。

研究に参加したINAFトリノ天文台のAldo Bonomo氏によれば、巨大ガス惑星は通常、恒星から遠く離れた領域(雪線やスノーラインと呼ばれる水が氷になる境界よりも外側の領域)で形成された後に、内側へ移動してくると考えられています。しかし本研究は、巨大で極端な楕円軌道を持つ天体(TOI-201 c)のすぐ内側という限られた環境下でも、巨大ガス惑星を含む惑星(TOI-201 bとTOI-201 d)が形成・存続し得ることを示しました。

また、TOI-201系の褐色矮星TOI-201 cは、トランジット法、TTV、視線速度法という3つの手法に加えて、将来的にはESA(ヨーロッパ宇宙機関)の宇宙望遠鏡「ガイア(Gaia)」のデータを用いたアストロメトリ(位置天文学)の手法でも特徴付けられる見込みです。研究チームによれば、TOI-201 cは、これら4つの異なる手法で同時に評価される初めての天体になる可能性があるといいます。

今後のさらなる観測によって、TOI-201系の立体的な構造や複雑な形成の歴史が、より鮮明に解き明かされることが期待されています。

参考:太陽系外惑星の観測方法について

太陽系外惑星の観測では「視線速度法(ドップラーシフト法)」および「トランジット法」という2つの手法が主に用いられています。

「視線速度法」とは、太陽系外惑星の公転にともなって円を描くようにわずかに揺さぶられる主星の動きをもとに、惑星を間接的に検出する手法です。

惑星の公転にともなって主星が揺れ動くと、光の色は主星が地球に近付くように動く時は青っぽく、遠ざかるように動く時は赤っぽくといったように、ドップラー効果によって周期的に変化します。こうした主星の色の変化は、天体のスペクトル(電磁波の波長ごとの強さの分布)を得る分光観測を行うことで検出されています。

視線速度法の観測データからは、太陽系外惑星の公転周期や最小質量を求めることができます。

【▲ 参考動画:太陽系外惑星の公転にともなって主星のスペクトルが変化する様子(Credit: ESO/L. Calçada)】

もう一つの「トランジット法」とは、太陽系外惑星が主星の手前を横切る「トランジット(transit)」を起こした際に生じる主星の明るさのわずかな変化をもとに、太陽系外惑星を間接的に検出する手法です。

繰り返し起きるトランジットを観測することで、その周期から惑星の公転周期を知ることができます。トランジット時の主星の光度曲線(時間の経過にあわせて変化する天体の光度を示した曲線)をもとに、惑星の直径や大気の有無といった情報を得ることも可能です。

近年では、トランジットの周期に生じるわずかな変動をもとに、重力を介して相互作用する別の惑星を捜索する手法「トランジットタイミング変動法(TTV法)」も用いられるようになっています。

【▲ 参考動画:太陽系外惑星のトランジットによって恒星の明るさが変化する様子(Credit: ESO/L. Calçada)】

また、太陽系外惑星がトランジットを起こしている時の主星の光には、惑星の大気(存在する場合)を通過してきた光もわずかに含まれています。

惑星の大気を通過してから届いた主星のスペクトルは「透過スペクトル」と呼ばれていて、惑星の大気に含まれる物質が特定の波長の電磁波を吸収したことで生じる暗い線「吸収線」が現れます。透過スペクトルを通常のスペクトルと比較すればどのような吸収線が現れているのかがわかるので、惑星の大気組成を調べることができます。

参考画像:恒星(左)の光を利用して太陽系外惑星(中央下)の大気組成を調べる手法のイメージ図。太陽系外惑星の大気を構成する物質が一部の波長を吸収するため、大気を通過して地球(右)に届いた主星の光のスペクトル(透過スペクトル)を分析することで、惑星の大気組成を調べることができる。また、大気にヘイズ(もや)がある場合は青い光が散乱して、通過した光は少し赤くなる(Credit: ESO/M. Kornmesser)
【▲ 参考画像:恒星(左)の光を利用して太陽系外惑星(中央下)の大気組成を調べる手法のイメージ図。太陽系外惑星の大気を構成する物質が一部の波長を吸収するため、大気を通過して地球(右)に届いた主星の光のスペクトル(透過スペクトル)を分析することで、惑星の大気組成を調べることができる。また、大気にヘイズ(もや)がある場合は青い光が散乱して、通過した光は少し赤くなる(Credit: ESO/M. Kornmesser)】

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典