
アメリカが主導する有人月探査計画「Artemis(アルテミス)」で初めての有人ミッションとなる「Artemis II(アルテミスII)」。NASA(アメリカ航空宇宙局)によると、歴史的な月面フライバイを終えた宇宙船「Orion(オリオン、オライオン)」は極めて良好な状態を保っており、地球への帰還に向けた大詰めを迎えています。
クルーが撮影した“天の川”などの画像を新たに公開

NASAがアメリカの現地時間2026年4月8日に開催した記者会見では、クルーが撮影した天の川の画像が新たに紹介されました。
NASA探査システム開発ミッション局(ESDMD)副局長代理のLakiesha Hawkins氏によれば、大気の影響を受けない深宇宙から撮影されたこの画像は、私たちが住む天の川銀河の姿を息を呑むほど鮮明に捉えています。
こうした画像をはじめ、光通信システムによる宇宙船から地球へのデータの伝送も順調に進んでおり、この日だけで122GB・累計で312GB以上のデータが地球へ送信された他に、4Kビデオのストリーミング配信にも成功したということです。

ミッション8日目には、重力がかかる地上の環境へ戻る際に血流を維持するための専用ウェアの着用テストが実施されました。また、船内では専用の装置を用いて微小重力や深宇宙の放射線環境が人体に与える影響を調べる実験なども進行しており、将来の月面基地構築や火星探査に向けた貴重なデータが蓄積されつつあります。
続くミッション9日目には、大気圏突入に向けたキャビンの片付けやシートの設置などが予定されています。なお、8日目に予定されていた宇宙船の手動操縦や機材を用いた放射線シェルターの構築など、一部のデモンストレーションは帰還準備を優先するために中止されています。

近づく帰還の日 大気圏再突入から着水までは13分
ミッション10日目となるアメリカ東部夏時間2026年4月10日20時07分(日本時間翌11日9時07分)頃、Orion宇宙船はアメリカ西海岸沖の太平洋へ着水する予定です。会見では大気圏再突入時のフライトディレクターを務めるNASAのRick Henfling氏から、当日の詳細なタイムラインが語られました。
計画によると、Orion宇宙船は大気圏に突入する約20分前に、エンジンなどがあるサービスモジュールをクルーが搭乗するクルーモジュールから分離。高度40万フィート(約122キロメートル)・秒速約3万4965フィート(約10.6キロメートル)でクルーモジュールが大気圏に突入すると、プラズマ化する大気の影響で、約6分間の通信途絶(ブラックアウト)が発生します。
その後、高度2万2000フィート(約6.7キロメートル)で減速用のパラシュートが、高度6000フィート(約1.8キロメートル)でメインパラシュートが展開され、クルーモジュールは大気圏突入から13分後に時速約20マイル(時速約32キロメートル)で海面へと着水する予定です。なお、予定通りの軌道で帰還した場合、クルーが受ける重力加速度の最大値は3.9Gになると予測されています。

着水海域の予報は良好 万全の体制で回収へ
Orion副プログラムマネージャーのDebbie Korth氏によると、帰路に実施された外部点検でも熱防護システムなどに懸念は見当たらず、宇宙船は極めて良好な状態にあります。
クルーの回収を行うアメリカ海軍のドック型輸送揚陸艦「USS John P. Murtha(ジョン・P・マーサ)」はすでに目標海域へ向かっています。Artemis計画のランディング・回収ディレクターを務めるNASAのLili Villarreal氏によれば、着水後はダイバーが安全を確認し、クルーを膨張式のいかだへ移動させた後、海軍のヘリコプターで揚陸艦へと移送する計画です。
目標となる着水海域の天候は風速10ノット、波の高さ4フィート以下と非常に良好な予報となっており、7機の航空機と2機のヘリコプターが空から着水の瞬間を見守るということです。10日間にわたる歴史的なArtemis IIミッションは、いよいよフィナーレを迎えようとしています。

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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