
こちらは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が観測した銀河団「MACS J1149.5+2223」(以下「MACS J1149」)。
しし座の方向、約50億光年先にあります。
MACS J1149は、多数の銀河が重力で結びついている「銀河団」のひとつ。画像の中央付近で白く輝いているのは、巨大な楕円銀河の集まりです。

ESA(ヨーロッパ宇宙機関)によれば、この銀河団には300以上の銀河が属していることが確認されており、さらに数百の候補が存在するとされています。
時空をゆがめる「重力レンズ効果」
この画像でひときわ目を引くのは、「重力レンズ効果」によって生じた奇妙な銀河の姿です。
重力レンズ効果とは、手前にある天体(この場合は銀河団MACS J1149)の大きな質量によって周囲の時空間がゆがみ、その背後にある遠方の天体から発せられた光の経路が曲げられることで、遠方天体の像がゆがんで見える現象です。
冒頭の画像には、この効果によって細長く引き伸ばされたり、奇妙な形にゆがんだりした銀河の像が多数捉えられています。
特に注目すべきは、画像中央の明るい楕円銀河のすぐ下に見える、クラゲのような形に引き伸ばされたピンク色の天体。これは、重力レンズ効果で像がゆがめられた渦巻銀河です。
この銀河は過去にもハッブル宇宙望遠鏡による観測が行われており、重力レンズ効果によって4つに分裂して見えた超新星「Refsdal(レフスダール)」や、2000倍に増光した当時観測史上最遠の青色超巨星「LS1」、別名「Icarus(イカロス)」が存在することで知られています。
初期宇宙の謎に迫るウェッブ宇宙望遠鏡
MACS J1149は天文学的に非常に注目度の高い存在です。NRC(カナダ国立研究機構)ヘルツベルク天体物理学研究所のChris J. Willottさんたち研究チームは、ウェッブ宇宙望遠鏡に搭載されている複数の高感度な観測機器を用いる観測プログラム「CANUCS」にて、初期宇宙に存在する質量の小さな銀河の星形成や化学組成を詳細に観測しています。
この取り組みを通じて、最初の星々が宇宙を照らした再電離期(※)の解明や、銀河団という環境が星形成活動をどのように抑制するのかといった、宇宙の進化の謎に迫ることが期待されます。
※…ビッグバン直後に電離していた水素やヘリウムの原子核が電子と結合した後、宇宙初期の星から放射された紫外線によって中性水素が再び電離するようになった出来事。ビッグバンの2億~4億年後から10億年後頃までに完了したと考えられています。
冒頭の画像はESAのESA/Webbから2026年1月22日付で公開されています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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