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ピーク時に放った光は太陽10兆個分 2018年発見のブラックホールフレアは潮汐破壊が原因か

こちらは最新の研究成果にもとづいて描かれた、超大質量ブラックホール(超巨大ブラックホール)に破壊されつつある恒星の想像図。

ブラックホールの周囲でガスが渦巻く降着円盤のなかを、強大な潮汐力で引き伸ばされながら落下していく大質量星が描かれています。

超大質量ブラックホールに破壊されていく大質量星の想像図(Credit: Caltech/R. Hurt (IPAC))
【▲ 超大質量ブラックホールに破壊されていく大質量星の想像図(Credit: Caltech/R. Hurt (IPAC))】

カリフォルニア工科大学(Caltech)のMatthew Graham教授たち研究チームは、2018年に観測されたフレア(※1)について、観測史上最も明るいブラックホールフレアだとする研究成果を発表しました。

研究チームによると、このフレアは天球上の位置をもとに「J2245+3743」と呼ばれる活動銀河核(※2)に由来します。J2245+3743は光路距離で約110億光年先(赤方偏移z=2.554)にあり、中心には太陽の約5億倍の質量がある超大質量ブラックホールが存在すると考えられています。

太陽質量30倍以上の恒星がブラックホールに破壊された可能性

2018年にパロマー天文台(アメリカ・カリフォルニア州)の掃天観測システム「ZTF」(Zwicky Transient Facility=ツビッキー・トランジェント天体探査装置)が発見し、同天文台のヘール望遠鏡で追加観測が行われたJ2245+3743のフレアは、当初は目立った特徴はないと思われていました。

ところが2023年、研究チームはフレアの明るさの減衰が予想よりも遅いことに気が付き、W. M. ケック天文台(アメリカ・ハワイ州)のケック望遠鏡を使ってさらなる観測を行いました。

J2245+3743のフレアは数か月かけて約40倍増光した後、6年以上かけて減光する様子が観測されてきました。ピーク時に放出された光は、実に太陽約10兆個分に達したと推定されています。

観測データを分析した結果、このフレアで放出されたエネルギーはそれまでに知られていた活動銀河核のフレアと比べて30倍以上で、太陽1個分の質量がまるごとエネルギーに変換されたのと同等だったことがわかりました。

研究チームはこのフレアの原因として、「潮汐破壊現象(TDE)」の可能性が最も高いと考えています。潮汐破壊現象はブラックホールに接近しすぎた恒星が潮汐力によって破壊される現象です。

Caltechによれば、潮汐破壊現象はこれまでに100件ほどの観測例があるものの、活発に周囲の物質を取り込む活動銀河核では他の活動に由来するフレアにまぎれてしまうため、稀にしか観測されないといいます。

貴重な観測例となったJ2245+3743のフレアは、少なくとも太陽30個分の質量を持つ大質量星の破壊にともなって発生したと推定されています。

脚注

※1…天体から短時間で放出された大量のエネルギーが電磁波の変化(増光)として観測される現象。

※2…強い電磁波を放射する銀河中心部の狭い領域、AGN。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典