宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月4日、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)に搭載されている温室効果ガス観測センサー(TANSO-FTS)に問題が発生したと発表した。
発表によると、問題が発生したのは8月2日の正午(日本時間)ごろのことで、同センサーの熱赤外バンド(バンド4)用検出器をマイナス200度Cに冷却するための冷凍機が停止したことから、熱赤外バンドの観測を中断したという。
JAXAでは現在、停止した要因の解析を進めており、今後の処置を検討しているという。
宇宙から赤外線を観測する場合、観測機器そのものの熱から発生する赤外線によって観測に影響が出ないよう、機器自身を冷やさなければならない。そのために使われるのが冷凍機である。「いぶき」に搭載されているものは単段パルス管冷凍機と呼ばれるもので、冷却には液体窒素が使われている。米国のノースロップ・グラマン社が製造し、同型の冷凍機は「ひまわり6号」や、NASAの地球観測衛星「OCO-2」などにも搭載されている。
TANSO-FTSは、短波長赤外域(1.6μmと2.0μm)と、熱赤外域(14.3μm)に存在する二酸化炭素などの温室効果ガスの吸収スペクトルを、フーリエ干渉計と呼ばれる分光器の一種で測定し、そのガス濃度を決定することができる。なお、TANSO-FTSの短波長赤外バンド(バンド1~3)の検出器は正常で、現在も二酸化炭素・メタンの観測を継続しているという。
「いぶき」は温室効果をもたらすといわれている二酸化炭素やメタンなど温室効果ガスの濃度分布を宇宙から観測し、気候変動の予測精度の向上や、環境問題の対応に貢献することを目的としている。2009年1月23日にH-IIAロケット15号機で打ち上げられ、高度約667km、軌道傾斜角約98度の、太陽同期準回帰軌道から観測を続けている。
当初の計画通り、2014年1月に5年間の定常運用期間を完了したが、衛星の状態が良好だったことから、そのまま運用が継続されている。ただ、衛星の設計寿命である5年を超えていることから故障しやすくなっており、すでに2014年5月には2翼ある太陽電池パドルのうち、片側のパドルの回転機構が停止している。
■いぶき(GOSAT)搭載温室効果ガス観測センサ熱赤外バンド観測中断について|最新情報一覧|いぶき(GOSAT)|人工衛星プロジェクト|くらしに役立つ人工衛星を開発する第一宇宙技術部門
http://www.satnavi.jaxa.jp/project/gosat/news/2015/150804.html