米航空宇宙局(NASA)は11月12日、オリオン宇宙船の試験機を、整備棟からロケットの待つ発射台へと輸送した。このあとロケットとの結合作業が行われ、12月4日の打ち上げに向けて準備作業が続けられる。

オリオン試験機は米東部標準時11月11日20時30分、専用のトレーラーに載せられ、これまで作業が行われていたケネディ宇宙センターのローンチ・アボート・システム施設(Launch Abort System Facility)を出発した。そして時速約8kmというゆっくりとした速度で移動し、そして翌12日の3時7分に、打ち上げを担うデルタIVへビー・ロケットが待つ、ケープ・カナヴェラル空軍ステーションの第37発射台に到着した。

オリオンは現在、NASAとロッキード・マーティン社が開発中の宇宙船で、「NASAの宇宙船」としてはスペースシャトルの後継機にあたる。地球低軌道までにしか人を運べなかったスペースシャトルとは違い、オリオンはアポロ宇宙船のように月へ、そしてさらにその先の火星や小惑星へも人を運ぶことができる宇宙船として開発が進められている。

今回のミッションはEFT-1(Exploration Flight Test-1)と呼ばれており、オリオン試験機はデルタIVヘビーに搭載され、高度約5,800kmにまで到達する楕円軌道に投入される。そしてオリオンはそこから秒速約9kmで大気圏に再突入し、太平洋上に着水する。この試験により、オリオンの電子機器や耐熱システム、パラシュートなどが設計通り機能するかが確認される。ミッション時間は約4.5時間の予定だ。

現時点で打ち上げは、米東部標準時2014年12月4日7時5分から9時35分(日本時間2014年12月4日21時5分から23時35分)の間に予定されている。

すでにオリオンは完成しており、宇宙飛行士が搭乗するクルー・モジュールと、太陽電池パドルや生命維持システム、スラスターなどが集まるサービス・モジュール、そして緊急時の脱出システムなどが結合された状態にある。ただし、今回のミッションは無人での試験飛行で、またクルー・モジュールの耐熱システムやパラシュートなどの機能確認が主目的であるため、サービス・モジュールや脱出システムは同じ質量で造られたダミーで、機能はしない。

このEFT-1が完了した後、得られたデータからさらにオリオンの開発が進められ、そして2018年11月に探査ミッション1(EM-1、Exploration Mission 1)が実施される予定となっている。EM-1でもオリオンは無人だが、打ち上げるロケットには、現在オリオンと並行して開発が行われている新型ロケットのスペース・ローンチ・システム(SLS)が使われる。EM-1では地球から月まで行き、月の裏側を回って地球に帰還するルート(自由帰還軌道)での飛行が行われ、オリオンの全システムと、SLSの能力が試験される。

EFT-1とEM-1が無事に完了すれば、いよいよ次はオリオンに実際に宇宙飛行士を乗せた、有人飛行が行われる予定となっている。

 

■NASA’s Orion Spacecraft Arrives at Launch Pad, Hoisted onto Rocket Ahead of its First Spaceflight | NASA
http://www.nasa.gov/press/2014/november/nasa-s-orion-spacecraft-arrives-at-launch-pad-hoisted-onto-rocket-ahead-of-its/index.html#.VGXk0cm3JtY