
(引用元:ESA/Hubble)
こちらは、2007年7月31日にESA/Hubbleから公開された、はくちょう座の方向約2400光年(※1)先にある超新星残骸「網状星雲(Veil Nebula)」の一部です。ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の広域惑星カメラ2(WFPC2)で撮影されました。
※画像が公開された2007年当時は約1500光年とされていました。2021年以降に公開された画像では約2100光年に修正されています。

画像をよく見ると、糸のように細くシャープなフィラメント(ひも状構造)と、その間に広がるぼんやりとした淡い光の2種類が混在しています。一見すると異なる構造に見えますが、実はどちらも同じ衝撃波の姿です。違いを生み出しているのは、衝撃波を見ている向き、つまり「視線方向に対する衝撃波の角度」にあります。
シャープなフィラメントは、衝撃波の面を横から(エッジオンで)見ている部分です。衝撃波は非常に薄いシート状の構造なので、それを真横から見ると光が一本の線に凝縮されて、くっきりとしたフィラメントとして目に映ります。一方、淡く広がった領域は、同じ衝撃波の面を正面から(フェイスオンで)見ている部分です。正面から見ると光が面として広がるため、ぼんやりとした淡い光として観測されます。
たとえるなら、薄い布のベールを目の前にかざしたとき、折り目やシワの部分は線として濃く見えますが、平らに広がった部分は向こう側が透けて見えるほど薄く感じるのと似ています。網状星雲の名の由来ともいえるベールのような姿は、こうした衝撃波の「見る角度による見え方の違い」が織り重なることで生まれているのです。
画像の色が伝える衝撃波のエネルギー
画像のカラフルな色合いは、人の目に見える色をそのまま再現したものではなく、衝撃波によって励起された異なる原子が放つ光を色分けした疑似カラーです(青は酸素、緑は硫黄、赤は水素が放つ光に応じて着色されています)。
網状星雲は、太陽の約20倍の質量を持つ恒星が約1万〜2万年前(※2)に超新星爆発を起こした後の残骸です。爆発で放出された物質は時速約60万kmという猛烈な速度で周囲の星間物質に突っ込み、ガスを数百万度にまで加熱しています。その後ガスが冷えていく過程で、酸素・硫黄・水素といった原子がそれぞれ固有の波長の光を放ち、画像に見られるカラフルな姿をつくり出しています。
こうして超新星爆発で撒き散らされた重元素は、やがて星間物質に混ざり込み、次の世代の星や惑星の材料となっていきます。私たちの体を構成する重要な元素の多くも、かつてこうした超新星爆発で宇宙に放たれたものです。
注釈
※1…2007年の画像公開当時は地球からの距離を「約1500光年」としていましたが、近年の観測データの向上により、現在では「約2400〜2600光年」が有力です。
※2…爆発が起きた年代についても、2007年当時は「5000〜1万年前」と推定されていましたが、その後の研究により現在では「約1万〜2万年前」へと見直されています。
編集/sorae編集部
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