
(引用元:ESA/Hubble)
今回紹介するのは、冥王星とその衛星たちの色の違いを示した模式図です。ハッブル宇宙望遠鏡の掃天観測用高性能カメラ「ACS」が2006年3月2日に取得したカラーデータをもとに作成されたもので、冥王星系を構成する天体それぞれの色合いがわかりやすく表現されています。

注目したいのは、冥王星本体だけが赤みを帯びている点です。冥王星の赤みは、表面の窒素やメタンの氷に太陽の紫外線が作用して生じた有機物(ソリンと呼ばれる物質)によるものと考えられています。一方、最大の衛星カロンと、小衛星のヒドラ(S/2005 P1)、ニクス(S/2005 P2)は、当時のハッブルの観測では、いずれも地球の月のような灰色がかった色をしていました。太陽光を波長によらずほぼ均等に反射しており、赤みを帯びた冥王星とは対照的です。また、カロンの表面は水の氷で覆われていることがわかっており、ニクス・ヒドラも同様の組成である可能性がこの観測で浮上しています。
3つの衛星の色が揃っているという観測結果は、かつて冥王星に別のカイパーベルト天体が衝突した際にまとめて誕生したとする「巨大衝突説」を後押しする証拠のひとつとなっています。ただし衝突の「仕方」については議論が続いており、2025年1月にはアリゾナ大学の研究チームが、従来の流体的な衝突モデルとは異なる「キス・アンド・キャプチャー」と呼ばれる新たなメカニズムをNature Geoscience誌で提唱しています。冥王星とカロンの元になった天体が衝突後に一度くっつき、回転してから分離したとするもので、冥王星系の形成シナリオは今なお更新が続いています。
そして、2006年当時は「特定の色味を持たない灰色」とされたニクスとヒドラの姿は、その後の観測で塗り替えられつつあります。2024年12月に開催されたAGU年会(アメリカ地球物理学連合の年次大会)では、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の赤外線観測から、両衛星の表面に水の氷だけでなくアンモニアや赤い物質も含まれていることが報告されました。この組成は太陽系外縁天体の中でも他に例がなく、「赤い氷(red ice)」と表現されるほど独特なものです。ハッブルが見つけた「同じ色」の先に、ウェッブが新たな個性を見出したというわけです。
冒頭の画像はESA/Hubbleから2006年3月10日付で公開されています。
編集/sorae編集部
関連記事
- ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた冥王星と衛星カロン/ニクス/ヒドラ
- "冥王星のハート" は低速の巨大衝突が起源? 地下に海はないかもしれない
- 冥王星の衛星「カロン」の北極が赤い理由
- NASA探査機「ニュー・ホライズンズ」冥王星フライバイから10周年
参考文献・出典
- ESA/Hubble - Schematic of the Pluto System(opo0615g)
- HubbleSite - Hubble's Latest Look at Pluto's Moons Supports a Common Birth
- NASA - Pluto's Two Small Moons Officially Named Nix and Hydra
- Denton et al. - "Kiss and capture origin for the Pluto–Charon binary"(Nature Geoscience, 2025)
- Cartier, K. M. S. - "Pluto's small moons are unlike any other"(Eos, 2024)

























