こちらは、セロ・トロロ汎米天文台(チリ)のブランコ4m望遠鏡で観測した渦巻銀河「NGC 1566」。かじき座の方向、地球から約7000万光年先にあります。

明るい中心部から伸びる2本の渦巻腕(渦状腕)が中心を包み込むように巻きついている様子は、どこか躍動感を感じさせます。
NGC 1566には「スパニッシュダンサー(スペインのダンサー)」という愛称があります。画像を公開したNOIRLab(アメリカ国立光学・赤外天文学研究所)も、この渦巻腕を激しく回転するダンサーの腕にたとえており、愛称にふさわしい姿と言えそうです。
色でわかる星々の年齢の違い
NOIRLabによると、NGC 1566の中心に近い領域が赤みを帯びて見えるのは、比較的温度が低い星々や塵(ダスト)が集まっているためです。対照的に、渦巻腕を縁取るように広がる青い色は、明るく輝く高温の星々の光です。
一般的に、恒星の性質はその質量に大きく左右されます。質量の大きな星ほど高温で青く輝きますが、恒星としての寿命は短くなります。そのため、青い星が目立つ領域は星が誕生してからそれほど時間が経っていない若い領域であり、低温の星々の光が目立つ領域は青い星がすでに姿を消した古い領域だと考えられています。
数百日で明るさを変えるNGC 1566の中心部
NGC 1566の中心には超大質量(超巨大)ブラックホールが存在するとみられており、その周囲のごく狭い領域が際立って明るく輝いています。こうした領域は「活動銀河核(AGN)」と呼ばれ、ブラックホールへ引き寄せられたガスなどが落下していく過程で高温になり、強い光(電磁波)を放っていると考えられています。
活動銀河核にはいくつかの種類がありますが、NOIRLabによれば、NGC 1566の活動銀河核はわずか数百日ほどで明るさが変化します。そのため、どのタイプの活動銀河核に分類すべきかを見極めるのは、天文学者でも難しいといいます。
実際に、2018年にはNGC 1566の中心部が赤外線からX線までの幅広い波長で急激に明るくなる様子が観測されました。この増光を分析した研究によると、NASA(アメリカ航空宇宙局)のガンマ線観測衛星ニール・ゲーレルス・スウィフト(Neil Gehrels Swift)による観測で最も暗かった時期と比べて、X線の明るさは70倍以上に達したといいます。
銀河の星形成を調べる研究の一環でウェッブも観測
また、2024年には、観測プロジェクト「PHANGS(Physics at High Angular resolution in Nearby GalaxieS)」の一環としてジェームズ・ウェッブ(James Webb)宇宙望遠鏡が観測した、NGC 1566を含む19個の渦巻銀河の画像が公開されました。
- “スパニッシュダンサー” 渦巻銀河「NGC 1566」 ウェッブとハッブルで観測(2024年2月11日)
PHANGSは、近くの宇宙にある銀河を高い解像度で観測することで、ガスから星が生まれる小さなスケールの物理が、銀河全体の構造や進化とどのように関わり合っているのかを解き明かすことを目的としたプロジェクトです。観測にはウェッブ宇宙望遠鏡のほか、ハッブル(Hubble)宇宙望遠鏡、南米・チリのアルマ望遠鏡(ALMA)、ESO(ヨーロッパ南天天文台)のVLT(超大型望遠鏡)などが使われています。
渦巻腕に沿って広がる星々や塵の様子を正面から見渡せるNGC 1566からは、銀河のなかで星がどのように生まれるのかを解き明かすための手がかりが得られるのです。
冒頭の画像はNOIRLabから2022年2月22日付で公開されました。
本記事は2022年2月24日公開の記事を再構成したものです。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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