
こちらは「きょしちょう座(巨嘴鳥座)」の方向約20万光年先の輝線星雲「NGC 248」です。燃えるような夕焼けの雲をひとつちぎり、視野を埋め尽くす数え切れない星々の海に浮かべたような華やかな光景が広がっています。

小マゼラン雲の“星のゆりかご”のひとつNGC 248 本当は重なった2つの星雲?
この画像は「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope: HST)」の「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」で取得したデータを使って作成されました。
NGC 248は天の川銀河の衛星銀河(伴銀河)のひとつである「小マゼラン雲(Small Magellanic Cloud: SMC)」にあります。見たところ1つの星雲にしか思えませんが、NASA=アメリカ航空宇宙局によれば実際には2つの星雲が1つに見えているのだといいます。
輝線星雲は若い大質量星から放射された紫外線によって電離した水素ガスが光を放っている星雲で、HII(エイチツー)領域とも呼ばれています。こうした領域はガスと塵(ダスト)を材料に星を形成する星形成領域であり、新たな星が誕生する現場であることから“星のゆりかご”と呼ばれることもあります。
誕生したばかりの宇宙にはほぼ水素とヘリウムしか存在しておらず、天文学で「金属」や「重元素」と総称されるより重い元素は恒星内部の核融合反応や超新星爆発などを通じて生成されることで、徐々にその量が増えてきたと考えられています。
小マゼラン雲は塵が生成されるのに必要な重元素の量が天の川銀河と比べて約5分の1から10分の1と少なく、初期宇宙の銀河に似ていると考えられています。天の川銀河のすぐ隣にある小マゼラン雲を観測することで、天文学者は初期宇宙の塵に関する手がかりを得ることができるのです。
冒頭の画像はNASAから2016年12月20日付で公開されたもので、2025年4月のハッブル宇宙望遠鏡打ち上げ35周年を記念して改めてNASAが紹介しています。
Two is better than one!
In a sea of stars, two bright nebulae shine in this image released during Hubble's 27th year. They're situated so that they appear to be one cloud. Together, they're called NGC 248 and are 200,000 light-years away: https://t.co/pbpiH8lYCV pic.twitter.com/wl9J9fHHuW
— Hubble (@NASAHubble) April 15, 2025
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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