-PR-

【▲ 赤色矮星を公転する地球に似た質量の系外惑星表面を描いた想像図。もしもウォルフ1069bに大気があれば、昼側の広い範囲に液体の水が存在する可能性があるという(Credit: NASA/Ames Research Center/Daniel Rutter)】

マックス・プランク天文学研究所(MPIA)のDiana Kossakowskiさんを筆頭とする研究チームは、約31光年先という比較的近いところにある地球に近い質量の太陽系外惑星を発見したとする研究成果を発表しました。「ウォルフ1069 b」(Wolf 1069 b)と呼ばれるこの系外惑星はハビタブルゾーンに位置しており、昼側の表面に液体の水が存在する可能性もあるようです。

■保守的なハビタブルゾーン内を公転 将来のバイオシグネチャー探索候補に

研究チームが今回報告したウォルフ1069 bは、「はくちょう座」の方向約31光年先にある赤色矮星「ウォルフ1069」(Wolf 1069)を公転しています。地球と比べて質量は少なくとも約1.26倍、半径は約1.08倍(推定値)で、主星のウォルフ1069を約15.6日周期で公転しています。主星のウォルフ1069は、質量が太陽の約0.167倍の赤色矮星です(スペクトル型はM5.0 V)。

ウォルフ1069 bは主星から約0.0672天文単位(※1)しか離れていないため、常に同じ面を地球に向けている月のように、主星の潮汐作用によって自転と公転の周期が同期した潮汐固定(潮汐ロック)の状態にあるとみられています。潮汐固定された惑星は主星に面した側が常に昼、反対側は常に夜の状態になります。

※1…1天文単位(au)=約1億5000万km、太陽から地球までの平均距離に由来。

【▲ ウォルフ1069 bの表面温度のシミュレーション結果を示したマップ(現在の地球に似た大気を持つと仮定、温度はケルビン)。マップ中央が惑星の昼側で、赤い線の内側では液体の水が存在し得るという(Credit: Kossakowski et al. (2023) / MPIA)】
【▲ ウォルフ1069 bの表面温度のシミュレーション結果を示したマップ(現在の地球に似た大気を持つと仮定、温度はケルビン)。マップ中央が惑星の昼側で、赤い線の内側では液体の水が存在し得るという(Credit: Kossakowski et al. (2023) / MPIA)】

研究チームによると、ウォルフ1069 bの公転軌道はウォルフ1069の保守的なハビタブルゾーン(※2)内にあります。大気が存在しないと仮定した場合の表面温度は平均マイナス約23℃(250ケルビン)と推定されていますが、現在の地球のような大気を持っていると仮定すれば、平均温度は約13℃(286ケルビン)に達している可能性もあるといいます。気候モデルを用いてシミュレーションを行った研究チームは、ウォルフ1069 bでは大気や表面の幅広い条件下で適度な温度と表面の水が維持され得ると結論付けています。

-PR-

※2…Conservative Habitable Zone、惑星の歴史の大半の期間を通して表面に液体の水が存在し得るとされる領域。

赤色矮星は表面で強力な爆発現象「フレア」が発生しやすい非常に活発な恒星として知られており、惑星の大気を剥ぎ取ってしまう可能性が指摘されています。しかし研究チームによると、ウォルフ1069は比較的活動性が低く、観測データは有害な活動を示しませんでした。赤色矮星の活動は星が若い頃に活発な段階を迎える傾向にあることから、もしもウォルフ1069 bが早い段階で大気を形成・維持できたとすれば、現在まで大気が維持されているはずだといいます。それだけでなく、弱いながらも地球に似た磁場を持つ可能性さえあるようです。

【▲ 参考画像:潮汐固定された水が豊富な地球サイズの系外惑星の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)】
【▲ 参考画像:潮汐固定された水が豊富な地球サイズの系外惑星の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

約31光年というウォルフ1069 bまでの距離は、プロキシマ・ケンタウリb(約4.3光年)、GJ 1061 d(約12光年)、ティーガーデン星c(約12.5光年)、GJ 1002 bおよびGJ 1002 c(約15.8光年)に次いで、保守的なハビタブルゾーンにある地球に似た質量の系外惑星としては6番目に近いとされています。ウォルフ1069 bはバイオシグネチャー(生命存在の兆候とみなされる物質)を探索する上で数少ない目標天体の1つとみなされており、ヨーロッパ南天天文台(ESO)が建設を進めている口径39mの「欧州超大型望遠鏡(ELT)」による将来の観測に期待が寄せられています。

■系外惑星の観測に用いられる視線速度法&トランジット法

系外惑星の捜索では「視線速度法(ドップラーシフト法)」および「トランジット法」という2つの観測手法が主に用いられています。ウォルフ1069 bはカラー・アルト天文台(スペイン)の3.5m望遠鏡に設置されている分光装置「CARMENES」による視線速度法を用いた観測で見つかりました。

「視線速度法」とは、系外惑星の公転にともなって円を描くようにわずかに揺さぶられる主星の動きをもとに、系外惑星を間接的に検出する手法です。惑星の公転にともなって主星が揺れ動くと、光の色(波長)は主星が地球に近付くように動く時は青っぽく、遠ざかるように動く時は赤っぽくといったように、ドップラー効果によって周期的に変化します。

こうした主星の色の変化は、天体のスペクトル(波長ごとの電磁波の強さ)を得る分光観測を行い、スペクトルに現れる吸収線(原子や分子が特定の波長の電磁波を吸収したことで生じる暗い線)の動きを追うことで検出されます。視線速度法の観測データからは系外惑星の公転周期に加えて、系外惑星の最小質量を求めることができます。

【▲ 系外惑星の公転にともなって主星のスペクトルが変化する様子を示した動画】
(Credit: ESO/L. Calçada)

もう一つの「トランジット法」とは、系外惑星が主星(恒星)の手前を横切る「トランジット(transit)」が起こった時に生じる主星の明るさのわずかな変化をもとに、系外惑星を間接的に検出する手法です。繰り返し起こるトランジットを観測することで、その周期から系外惑星の公転周期を知ることができます。また、トランジット時の主星の光度曲線(時間の経過にあわせて変化する天体の光度を示した曲線)をもとに、系外惑星の直径や大気の有無といった情報を得ることも可能です。

【▲ 系外惑星のトランジットによって恒星の明るさが変化する様子を示した動画】
(Credit: ESO/L. Calçada)

 

Source

  • Image Credit: NASA/Ames Research Center/Daniel Rutter, Kossakowski et al. (2023) / MPIA, NASA/JPL-Caltech
  • MPIA - A nearby potentially habitable Earth-mass exoplanet
  • Kossakowski et al. - The CARMENES search for exoplanets around M dwarfs. Wolf 1069 b: Earth-mass planet in the habitable zone of a nearby, very low-mass star (Astronomy & Astrophysics)

文/sorae編集部

-ads-

-ads-