NASAは4月21日、ハーバード大学のチャーリー・コンロイさんなどからなる研究チームが、天の川銀河のハローの外側の部分の全天地図を作成したと発表しました。研究チームによれば、この領域の全天地図が作成されたのは今回が初めてで、ダークマターの研究などに大きく貢献できるといいます。
私達の天の川銀河では、直径10万光年ほどの銀河円盤部の外側にハローと呼ばれる広大な領域が広がっています。
ハローは、銀河円盤部を球状に取り囲んでいて、すばる望遠鏡を使った国立天文台などの研究チームの研究成果によれば、その直径は100万光年を超えると考えられています。このようなハローには古い恒星や球状星団が低い密度で散在しています。
研究チームは、ESAの位置天文衛星ガイアとNASAの近地球物体広視野赤外線探査衛星NEOWISEの観測データを使って、天の川銀河のハローの外側の部分(天の川銀河の中心から20万光年~32万5,000光年ほどの領域)における全天地図を作成しました。これまで天の川銀河のハローのもっと内側の部分の地図はつくられていましたが、この領域の全天地図がつくられたのはこれが初めてとなります。
この今回の全天地図で、注目していただきたいのは、画像の左下に見えている、丸で囲われた、ひときわ明るく、恒星の密度が高い部分です。
この部分は、大マゼラン雲が、ハロー内を移動した際に、その重力的な影響によってつくられた、いわば大マゼラン雲の移動の軌跡(wake)です。これまでの研究から、このような軌跡が存在することは示唆されていましたが、実際に存在することが確認され、その詳細な形、大きさ、位置が明らかになったのは、これが初めてとなります。
研究チームによれば、恒星の分布はダークマターの分布の現れと考えられるために、この軌跡を詳しく調べることで、ダークマターの性質をよりよく理解することができるといいます。また、大マゼラン雲は約20億年後には天の川銀河と衝突すると考えられているために、この軌跡を詳しく調べることで、ダークマターを含む銀河同士の衝突などの相互作用の理解も深めることができるそうです。
【▲ 今回の全天地図を基にシミュレーションによって作成された大マゼラン雲によってつくられたダークマターの軌跡の3D動画(Astronomers Release New All-Sky Map of Milky Way’s Outer Reaches | NASA)】
Image Credit: NASA/ESA/JPL-Caltech/Conroy et. al. 2021
Source: NASA
文/飯銅重幸