この画像は2011年に公開された「NGC 5128」や「ケンタウルス座A」と呼ばれる銀河で、可視光・電波・X線をそれぞれ観測し、それらの画像を重ね合わせたものです。電波とX線は目に見えないため、ここでは電波で観測したものをオレンジ色、X線で観測したものを青で表現しています。画像の中心にある、左下から右上にかかる斜めの帯のようなものが銀河で、中心には超大質量ブラックホールが潜んでいると言われています。このブラックホールからは「ジェット」と呼ばれるプラズマの流れが吹き出しているのですが、銀河の大きさに匹敵するほどの泡のような構造を作り出しているのがわかります。ジェットの長さは両方を合わせて数十万光年から100万光年で、この電波の「泡」は数百万年ものあいだ輝き続けていると考えられています。
そのジェットの出どころを電波の観測によって描き出しているのが下の画像です。ブラックホールそのものを電波で観測することはできませんが、その付近からジェットが吹き出す様子を捉えています。タイトルにも付けた「秒速10万キロメートル」はこの付近のジェットの速さを見積もったもので、光の速さが秒速30万キロメートル(1秒間に地球を約7周半できるとも言われます)なので、その3分の1に達するほどです。ジェットの元になるのはブラックホールに落ちていく物質ですが、それがどのようにしてジェットになっているのかはまだよくわかっていません。
ところで、このブラックホール付近の画像を描き出したのは南半球にある9つの電波望遠鏡です。地理的に離れた電波望遠鏡が同じ天体を観測し、それらのデータを組み合わせることで良い「視力」を得ることができます。この技術を干渉計と呼び、日本でも岩手・鹿児島・小笠原・沖縄にある電波望遠鏡を組み合わせる例があります。ここではオーストラリア・チリ・南アフリカ・南極大陸のものを使っていますが、この9つの電波望遠鏡はそれぞれが直径数メートルから30メートル、大きいものだと64メートルといった巨大なアンテナで、宇宙からの電波を捉えています。
(▲太陽の5500万倍とも言われる重さ(質量)をもつ超大質量ブラックホールから、秒速10万キロメートルもの速さでプラズマが吹き出す様子を解説した動画)
Movie: NASA's Goddard Space Flight Center
Source: NASA(その1)、NASA(その2)
文/北越康敬