
漆黒の宇宙に浮かび上がった燃えるような黄金のリング。ESA(ヨーロッパ宇宙機関)が2026年2月20日付で公開したこの画像は、同年2月17日に起きた金環日食の様子を捉えたものです。

極端紫外線で捉えた“火の輪”
日食とは、月が太陽の前を横切ることで、太陽の全部または一部が隠される現象です。月の公転軌道は真円ではなく、地球から月までの距離は常に変化しているため、横切る時の月の見かけの大きさによっては太陽を完全に隠しきれず、真っ暗な月の周りに太陽がはみ出して見える金環日食が起こります。
冒頭の画像を撮影したのは、ESAが運用する小型人工衛星「PROBA-2」です。PROBA-2は大きさが0.6m×0.7m×0.85m、重さ130kgほどの小さな人工衛星で、新技術の軌道上実証などを目的として2009年に高度700km〜800kmの太陽同期軌道に投入されました。
撮影に使用された「SWAP(極端紫外線撮像装置)」は、人間には見えない波長17.4nmの極端紫外線を捉える観測装置です。本画像は協定世界時2026年2月17日11時31分(日本時間同日20時31分)に取得されたもので、「火の輪(ring of fire)」とも形容される金環日食中の太陽の姿を見事に捉えています。
地球を周回する衛星が同じ日食を4回観測
PROBA-2の科学運用とデータ処理を監督するPROBA-2サイエンスセンターによると、地球を周回するPROBA-2は今回の日食が継続している間に月の影を複数回通過し、合計4回の観測を行うことに成功しています。冒頭の画像は2回目の通過時に取得されたもので、太陽の約93%が月に隠される見事な金環日食となりました。
また、最初の通過と4回目の通過では太陽が小さく欠けた部分日食が、3回目の通過時にはほぼ皆既日食となる様子が観測されたということです。SWAPは平均で20秒に1枚という高頻度で画像を取得し、宇宙空間という独自の視点から貴重なデータをもたらしました。
地上からは南極大陸の限られた地域のみで観測
一方、今回の金環日食を地上から観測できたのは、南極大陸の限られた地域のみでした。標高およそ3200mの内陸部に位置するコンコルディア基地はその貴重な場所に位置しており、滞在中の研究者たちが金環日食を目撃しています。

フランスとイタリアが共同で運用するコンコルディア基地は隔絶された環境にあり、冬には数か月間も太陽が昇らない極夜を経験します。ESAは同基地に毎年医師を派遣しており、将来の月や火星の有人探査に向けて、宇宙飛行士への心理的・生理的影響を研究する重要な拠点としても活用されています。
なお、今回の日食は、南アメリカのチリやアルゼンチンの南端、アフリカ南部といった地域で、太陽の一部が隠れる部分日食として観測されています。次に日本で日食が見られるのは2030年6月1日(北海道の大部分で金環日食)とまだだいぶ先ですが、その日まではPROBA-2のような“宇宙の特等席”からの眺めを通じて、ダイナミックな天体ショーを楽しみましょう!
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- ESA - Annular solar eclipse seen from space
- ESA - Annular solar eclipse over Antarctica
- PROBA2 Science Center - Annular eclipse on February 17

























