ロシア連邦宇宙局、フルーニチェフ社は10月21日、ロシアのカスミーチェスカヤ・スヴャース社の通信衛星エクスプレースAM6を積んだ、プロトンM/ブリーズMロケットの打ち上げに成功した。プロトン・ロケットの打ち上げは、今年5月に打ち上げに失敗して以来、2機目となる。
ロケットは現地時間2014年10月21日21時9分32秒(日本時間2014年10月22日0時9分32秒)、カザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地の81/24発射台から離昇した。プロトンは順調に飛行し、約10分後にブリーズM上段と衛星を分離した。その後ブリーズMは9時間超にわたる飛行をこなし、エクスプレースAM6を分離した。
エクスプレースAM6は、ロシアの衛星通信会社カスミーチェスカヤ・スヴャース社が運用する衛星で、ISSレシェトニェーフ社が製造した。ただしトランスポンダーなどのペイロードはカナダのMDA(MacDonald, Dettwiler and Associates)社によって製造、提供されている。トランスポンダーは14基のCバンド、44基のKuバンド、12基のKaバンド、そして2基のLバンドのものが搭載されている。衛星はロシア全域に対して、インターネットやテレビ、ラジオ放送など、通信や放送サービスを提供する。また、ロシア政府の移動体通信にも使われるという。
ISSレシェトニェーフ社によれば、エクスプレースAM6はイオン・スラスターを積んでおり、今後徐々に高度を上げ、2015年初頭に静止軌道に乗る予定だという。打ち上げ時の質量は3,358kg、設計寿命は15年が予定されている。
今回のミッションは、今年5月の打ち上げ失敗以来2機目、また飛行再開となった9月27日の通信衛星ルーチの打ち上げから1か月弱での打ち上げとなった。
5月の打ち上げ失敗は、ロケットの第3段で問題が起きたことで発生した。その原因については、飛行再開後の9月29日に、プロトンの商業打ち上げを担当しているインターナショナル・ローンチ・サービシズ社が発表している。
プロトンMの第3段は、メイン・エンジンのRD-0213と、4つのノズルからなるヴァーニア・エンジンのRD-0214から構成されている。加速は主にRD-0213が担当し、ステアリング(舵取り)はRD-0214が担当している。
発表文によれば、RD-0214のターボ・ポンプはRD-0213の構造フレームにボルト締めで固定されているが、その結合面が構造破壊を起こしたとされる。そして固定がなくなったことで、RD-0214のターボ・ポンプが振動を始め、酸化剤ガス・ジェネレーターへ繋がる燃料配管が破壊される。そこから燃料が漏れ出し、ターボ・ポンプが止まりRD-0214が燃焼を停止。そして第3段がコントロールを失ったことで姿勢が乱れはじめ、やがてRD-0213も停止し、最終的に軌道速度を出すことができず墜落したという。
なお、現在の打ち上げ計画によれば、プロトンは今年中に、あと2回の打ち上げを予定している。まず11月から12月ごろに、SES社の通信衛星アストラ2Gを打ち上げる予定だ。これは5月の失敗後初となる、ILS社が手がける商業打ち上げとなる(前回のルーチは政府系衛星、今回のエクスプレースAM6はロシア国営企業の衛星)。また年末には国営のガスプローム社の通信衛星ヤマール401を打ち上げる予定だ。
■ФЕДЕРАЛЬНОЕ КОСМИЧЕСКОЕ АГЕНТСТВО (РОСКОСМОС) - КА «Экспресс-АМ6» выведен на целевую орбиту
http://www.federalspace.ru/21033/