中国の国家国防科技工業局は8月10日、今年10月に予定している打ち上げに向け、嫦娥五号飛行試験機を、打ち上げ場所である西昌衛星発射センターへ輸送したと発表した。

中国は現在、2017年の打ち上げを目指し、嫦娥五号の開発を進めている。嫦娥五号は月に着陸して石や土を採取し、地球に持ち帰るサンプル・リターンを行うことを目指す計画だ。

これまで中国は、嫦娥一号と二号で月軌道への投入、そして嫦娥三号で月面に着陸した経験がある。しかし嫦娥五号の実現のためには、月面から離陸し、月軌道から離脱して地球へ向かう軌道に乗り、そして第二宇宙速度(秒速11.2km)に近いスピードで地球の大気圏に再突入し、ある程度狙った地点に着陸する技術が必要だ。

嫦娥五号飛行試験機はこうした地球と月の往復航行と、第二宇宙速度で大気圏へ再突入し、地上に帰還するための技術を試験することを目的としている。なお、名称はまだ定まっておらず、「嫦娥五号飛行試験機」や「嫦娥五号任務返回機」、また「Chang'e-5 Test-1(CE5-T1)」などと複数の名前で呼ばれている。

また、いくつかの報道によれば、嫦娥五号飛行試験機には細菌などの生物が搭載されるとされる。ヴァン・アレン帯の外の、高い放射線環境で生物がどのような影響を受けるかを実験し、将来の有人月探査の研究に役立てるのであろう。

以前明らかにされた写真によれば、帰還カプセルは神舟宇宙船の帰還カプセルと相似形をしていることが分かっている。神舟の設計を流用することで、開発の期間、コスト、リスクを抑えたと思われる。

打ち上げ時期は今年の10月とされており、中国の宇宙開発系の掲示板では、10月24日という情報が流れている。

 

■飞行试验器运抵发射场 我国今年将进行探月三期再入返回飞行试验
http://www.sastind.gov.cn/n132/n230/n18088/c380159/content.html