中国航天科技集団公司(CASC)は8月18日、地球観測衛星「高分二号」を搭載した長征四号乙ロケットの打ち上げに成功した。長征四号乙は昨年12月に打ち上げに失敗しており、今回が飛行再開となった。またポーランドが開発した超小型衛星ブライトPL-2も同時に搭載され、軌道に投入された。
ロケットは中国標準時2014年8月18日11時15分(日本時間2014年8月18日12時15分)、太原衛星発射センターの9号発射施設から離昇した。その後、中国政府や国営メディアは打ち上げ成功と発表。また米国の宇宙監視ネットワークも軌道上に4つの物体を検知し、打ち上げ成功が裏付けられた。
高分二号は中国が進めている、民間向けの中国高分解能地球観測システム(CHEOS、China High-resolution Earth Observation System)の2機目の衛星だ。「高分」とは「高分解能」という意味だ。
衛星は中国東方紅衛星社によって製造され、分解能はパンクロマティックで0.8m、マルチスペクトルで3.2mという性能を持つ。設計寿命は4年から8年とされる。宇宙監視ネットワークのデータによれば、衛星は遠地点高度632km、近地点高度608km、軌道傾斜角98.03度の軌道に乗っている。
CHEOSは2006年に提案され、翌2007年に中国政府によって承認された。最終的に全7機からなる光学衛星と合成開口レーダー衛星群を展開することを目指しており、得られたデータは国土資源部や環境保護部、農業部によって、農業への支援、防災や災害への対応、気候変動の監視、地図の作成、環境や資源の観測といった目的で使用される。
高分一号は昨年の4月26日に、長征二号丙ロケットに搭載されて打ち上げられた。高分一号の分解能はパンクロマティックで2m、マルチスペクトルで8mであり、二号では性能が向上していることが伺える。なお高分一号には、広い範囲を撮影するための分解能16mのカメラも搭載されていたが、高分二号にも同様のものが搭載されているかは不明だ。
また、高分二号と一緒に、ポーランドとカナダが開発した超小型衛星ブライトPL-2も打ち上げられた。この衛星はカナダとオーストリア、ポーランドが共同で実施しているブライト(BRITE、BRIght-star Target Explorer)計画の一翼を担い、他の衛星と編隊飛行を行い、搭載している望遠鏡で宇宙空間から明るい恒星を観測する。2013年には1号機のブライトPLがすでに打ち上げられており、またカナダのユニブライト(UniBRITE)、ブライトCA、オーストリアのTUGsat 1といった衛星も打ち上げられている。
今回の長征四号乙の打ち上げは、昨年12月9日の打ち上げ失敗以来初めてのことであった。この打ち上げでは、ロケットの第3段エンジンが計画より早く停止してしまい、搭載していた衛星ごと地球に落下している。その後の調査により、失敗の原因は燃料系統にゴミが混入したためであると結論付けられ、部品の品質改善と共に、組み立てや試験といった作業にも改良が加えられたとされる。また、本来高分二号の打ち上げも昨年12月に行われる予定だったが、この事故のため今回まで延期された。
長征四号は上海航天技術研究院(SAST)によって開発、製造されているロケットで、長征二号をベースに、四酸化二窒素と非対称ジメチルヒドラジンを使用する第3段を追加した機体だ。
もともとは長征二号を、静止衛星打ち上げロケットに発展させる際にSASTが提案した構成であるが、中国運載火箭技術研究院(CALT)が液体酸素と液体水素を使用する第3段を搭載した構成を提案、最終的にCALT案が選ばれ、これが現在の長征三号となった。一方でCALT案は液体酸素と液体水素を使う先進的な設計であったことから、そのバックアップとしてSAST案も開発が行われた。その後、長征三号が無事に実用化されたため、SAST案は極軌道打ち上げロケットへ転用され、すなわちそれが現在の長征四号である。
長征四号の最初の機体、長征四号甲は1988年9月6日に初飛行し、1990年9月3日に2機目が打ち上げられ、引退した。その後1999年5月10日に、長征四号甲のフェアリングを大型化し、またエンジンなどに改良を施して打ち上げ能力を高めた長征四号乙が登場。さらに2006年4月26日には、第3段に再点火可能なYF-40エンジンを搭載した長征四号丙が投入された。現在長征四号乙と丙が、主に軍事衛星や地球観測衛星の打ち上げに使用されている。
長征四号はこれまでに計37機が打ち上げられており、昨年の長征四号乙の失敗以外は安定した打ち上げを続けている。
■国家航天局 - 我国成功发射高分二号卫星
http://www.cnsa.gov.cn/n1081/n7529/n308608/643581.html