フルニチェフ社は26日、ロシア衛星通信社の通信衛星エクスプレスAM5を搭載したプロトンM/ブリーズMロケットを打ち上げた。今年7月に劇的な墜落事故を起こしたプロトンだが、今年最後となる打ち上げを完璧な成功をもって終え、プロトンロケットの、そしてロシア宇宙開発の信頼回復に向けて希望を繋いだ。
エクスプレスAM5を搭載したプロトンM/ブリーズMは、現地時間12月26日16時50分(日本時間同日19時50分)、カザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地の81/24発射台から離昇した。雪で白く染まった冬の発射台を、その力強い排気で夏に変えながらロケットは上昇し続け、9時間22分後に衛星を分離、打ち上げは成功した。
エクスプレスAM5はロシア衛星通信社(RSCC)によって運用される通信衛星で、キセノンを推進剤とするイオンエンジンを搭載している。ロシアの衛星に電気推進エンジンが搭載されるのは今回が初めて。ブリーズM上段からの分離直後、衛星は33,800km x 37,800km、軌道傾斜角0.18度の軌道に乗っており、今後このイオンエンジンを使い、静止軌道へ移動する。
衛星の製造はISSレシェトニェーフ社によって行われ、通信機器はカナダのMDA社が製造している。打ち上げ時の質量は3,600kgで、設計寿命は15年が予定されている。
今年プロトンMは全10機が打ち上げられたが、7月2日に劇的な墜落事故を起こした。しかし約3ヵ月後となる9月29日に通信衛星アストラ2Eの打ち上げで飛行を再開し、10月25日に通信衛星シリウスFM6を、11月11日に軍用通信衛星ラーデュガ1Mを、そして12月8日にはインマルサット5 F1を打ち上げるなど、連続した成功を続けている。
7月の打ち上げ失敗は、ロシア連邦宇宙局の長官の交代や、ドミートリィ・ロゴージン副首相によるロシア宇宙産業の改革など、ロシアの宇宙開発全体に多くの変化を巻き起こした。その将来はまだ不透明ではあるが、プロトンMの復活は、多少なりとも期待を抱かせるものとなった。
■Proton M Successfully Orbited Russian-made Express AM5 Communication Satellite
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