火星探査車「Perseverance」について知っておきたい7つのこと

アメリカ航空宇宙局(NASA)の火星探査車「Perseverance」が2021年に火星への着陸に成功しました。これにより、火星での生命の痕跡を探すという壮大なミッションが始動しています。Perseveranceには最先端の技術を搭載しており、その成果が大いに期待されています。

そこで今回は、Perseveranceについて知っておきたい7つのポイントを解説します。

火星探査車「Perseverance」(Credit: NASA/JPL-Caltech)
火星探査車「Perseverance」(Credit: NASA/JPL-Caltech)

1 生命の痕跡を探す

Perseveranceに搭載されている科学機器(Credit: NASA/JPL-Caltech)
Perseveranceに搭載されている科学機器(Credit: NASA/JPL-Caltech)

Perseveranceは「火星に微生物が存在した痕跡」を、さまざまな科学装置で調査します。

例えば、ロボットアームの先に取り付けられた観測装置「SHERLOC」は、火星に存在した可能性のある生命の痕跡を探すために役立ちます。これは、岩石に含まれる鉱物や有機化合物を調べることが可能です。同じくロボットアームにある「PIXL」は、岩石や堆積物の元素組成を詳細に分析します。

また、Perseveranceは離れた場所から科学データを測定できる機器を搭載しています。ズーム機能を持つカメラ「Mastcam-Z」や、レーザーを使用して岩石を蒸発させ、そのプラズマから岩石の組成を調べる「SuperCam」、地下の地質的特徴を調べるための地中レーダー「RIMFAX」などの科学機器を使用し、探査を行います。

 

2 探査車は生命の痕跡が見つかる可能性のある場所に着陸

着陸予定地点のジェゼロ・クレーター(Credit: NASA/JPL-Caltech)
着陸予定地点のジェゼロ・クレーター(Credit: NASA/JPL-Caltech)

Perseveranceは、火星の北半球に位置する直径45kmの「ジェゼロ・クレーター」に着陸しました。このクレーターは約35億年以上前に水が流入し、湖だったと考えられており、一部には三角州も形成されました。当時のジェゼロ・クレーターは生命が生息できる環境だった可能性があり、堆積物から生命の痕跡が見つかることが期待されています。

 

3 火星の地理や気候に関する重要なデータを集める

火星の空のイメージ(Credit: NASA/JPL-Caltech)

これまでの研究や探査によると、火星は遠い昔、地球と非常に似た惑星であったことが指摘されています。両惑星ともに表面に液体の水が存在するなど、共通の特徴を持っていました。

しかし現在では、火星と地球は全く異なる惑星となっています。そのため、火星の地質や気候を研究することは「形成初期に似ていた地球と火星がなぜ変化したのか」という謎を解く手がかりになります。

4 困難を乗り越える精神を体現する「Perseverance」

探査車に取り付けられたパネル(Credit: NASA/JPL-Caltech)
探査車に取り付けられたパネル(Credit: NASA/JPL-Caltech)

Perseveranceの打ち上げや運用は、世界中で新型コロナウイルスが猛威を振るう中で行われました。探査車の名前である「Perseverance」は日本語で「忍耐」を意味しますが、世界中の医療従事者の「忍耐」に敬意を示すものとして、一枚のプレートが探査車に取り付けられました。そのプレートにはアスクレピオスの杖(蛇が巻きついた杖)が描かれています。アスクレピオスの杖は、世界保健機関(WHO)のマークにも採用され、医療のシンボルとして広く知られています。

 

5 ESAと初の共同サンプルリターン計画

Perseveranceが落とした容器の回収を行うESAの探査車(Credit: NASA/JPL-Caltech)
Perseveranceが落とした容器の回収を行うESAの探査車(Credit: NASA/JPL-Caltech)

Perseveranceが行う重要な探査の一つに、人類初となる火星のサンプルリターン計画があります。この計画はヨーロッパ宇宙機関(ESA)と共同で実施されます。まず、Perseveranceが火星の土壌や岩石を採取し、チューブ状の保存容器に詰め込みます。これらの容器は火星表面に残され、2026年頃に打ち上げられるESAの探査車が回収を行います。その後、小型ロケットで火星軌道上の探査機に届けられ、地球へ帰還するという非常に難易度の高いミッションです。スケジュール通りに進めば、2031年頃に火星のサンプルを手に入れることができます。

6 将来の月・火星探査に向けた準備を行う

火星探査車「Perseverance」が「ジェゼロ・クレーター」に着陸する想像図(Credit:NASA/Jet Propulsion Laboratory)
火星探査車「Perseverance」が「ジェゼロ・クレーター」に着陸する想像図(Credit:NASA/Jet Propulsion Laboratory)

Perseveranceのミッションの一つは、将来の有人・無人火星探査の準備や技術実証を行うことです。例えば、「Terrain-Relative Navigation」(TRN)は着陸時に地表面を撮影し、その画像と火星表面の地図を比較して、安全な着陸地点を自動で選ぶ仕組みが備わっています。

また、探査車内部に設置された「MOXIE」は、二酸化炭素を酸素に変換する実験装置です。火星大気の主成分は二酸化炭素ですが、これを酸素に変換することで、将来的にはロケット燃料や呼吸用の酸素として利用できると期待されています。

さらに、Perseveranceは火星ヘリコプター「インジェニュイティ」も搭載しています。インジェニュイティは人類史上初めて他の惑星で動力飛行を行いました。科学機器は搭載されていないものの、カメラを使用した撮影を行います。2021年4月19日に初飛行を成功させ、その後も複数回の飛行を実施しています。

7 あなたも一緒に火星へ?

2019年5月から9月にかけて全世界で募集された「あなたの名前を火星に」キャンペーンでは、約1000万人以上の名前が集められ、シリコンチップに刻まれました。

このチップを載せたプレートは、探査車のマストから見える部分に取り付けられています。さらに、応募した人は登録したメールアドレスを専用サイトに入力すると、自分の名前が記載された「火星行きの搭乗券」を手に入れることができました。自分の名前を搭載した探査車がこれから数多くの発見をするかもしれないと思うと、感慨深いものがありますね。

 

Source

  • Image Credit: NASA/JPL-Caltech
  • NASA - Mars2020 Perseverance Landing Press kit P3~6 Introduction

文/出口隼詩 偏執/sorae編集部

最終更新日:2024/10/25