火星探査車「パーセベランス」の目的地はかつて湖があったクレーター

■パーセベランスが着陸する「ジェゼロ・クレーター」には数十億年前に湖があったとみられる

パーセベランスの目的地ジェゼロ・クレーター。色は標高の違いを表しており、明るい色ほど標高が高く、暗い色ほど低い。クレーター左側の黒い楕円はパーセベランスの着陸範囲を示す(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS/JHU-APL/ESA)

日本時間7月30日20時50分に打ち上げが予定されているNASAの火星探査ミッション「マーズ2020」の探査車「パーセベランス(Perseverance)」は、来年2021年2月18日に火星の「ジェゼロ・クレーター」へと着陸します。ジェゼロは広大な衝突盆地と考えられているイシディス平原の西端に位置する直径45kmのクレーターです。

ジェゼロ・クレーターには今から35億年以上前に外部から水が流入したことでができていたと考えられており、クレーターの西側にある地形は水が運んだ堆積物によって形成された三角州とみられています。NASAの火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)」による軌道上からの観測により、ジェゼロ・クレーターにはかつて水があったことを示唆する粘土鉱物が存在することも判明しています。

湖があった頃のジェゼロ・クレーターは生命が生存できる環境を一定の期間保っていた可能性があり、もしも生命が誕生していたとすれば、その痕跡が今も残っているかもしれません。火星で誕生したかもしれない生命の探索はパーセベランスの重要な目的のひとつであり、かつての湖底や湖岸の堆積物から生命の痕跡が見つかることも考えられます。

水で満たされていた頃のジェゼロ・クレーター西部を描いた想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona)

■ジェゼロ・クレーターのサンプルは人間が初めて手にする火星の土になるかも

また、パーセベランスがジェゼロ・クレーターで採取したサンプルは、人類が初めて入手する火星地表のサンプルになる可能性があります。現在NASAと欧州宇宙機関(ESA)では火星からのサンプルリターンミッションを計画しており、パーセベランスはサンプルの採取と保管容器への封入という最初のステップを担います。

地表に置かれたサンプルの保管容器は数年後に到着したESAの探査車によって回収され、NASAが担当する着陸機によって小さなロケットに積み込まれて火星の表面から打ち上げられます。宇宙空間に到達した保管容器は待機していたESAの探査機が回収し、地球へと持ち帰る予定です。

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パーセベランスによるサンプル採取、探査車と着陸機によるサンプル回収と打ち上げ、探査機による地球へのサンプル輸送という複雑な連携ミッションですが、予定通りならパーセベランスの火星着陸から10年後の2031年に、人類はジェゼロ・クレーターのサンプルを手にすることになります。

生命の痕跡の探索や人類初の火星サンプルリターンといった重要な任務を担うパーセベランス。まずは打ち上げが無事成功することを願うばかりです。

火星探査車パーセベランスと、地表に残されたサンプルの保管容器を描いた想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)

 

Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA(1) / NASA(2)
文/松村武宏

最終更新日:2020/07/30