アメリカ航空宇宙局(NASA)は2023年12月8日付で、「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope:HST)」が同日に科学観測を再開したと発表しました。発表時点では「広視野カメラ3(WFC3)」と「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」の運用が再開しており、「宇宙起源分光器(COS)」と「宇宙望遠鏡撮像分光器(STIS)」は2023年12月後半の運用再開が予定されているということです。【最終更新:2023年12月9日10時台】
既報の通り、ハッブル宇宙望遠鏡は現在3基稼働しているジャイロスコープ(ジャイロセンサー、角速度センサー)のうち1基に生じた不具合の影響で、2023年11月23日からセーフモードに入っていました。NASAによると、問題が生じたジャイロスコープの分析を進めた結果、運用チームは3基のジャイロ全てを使って科学観測を再開できると12月7日までに判断していました。
ジャイロスコープは姿勢制御に関する機器の一つで、望遠鏡が向いている方向を検出するために搭載されています。普段のハッブル宇宙望遠鏡は効率を最大限高めるために3基のジャイロを同時に使用していますが、姿勢を検出する他のセンサー(磁力計、太陽センサー、スタートラッカー)と連携することで、1基のジャイロだけでも科学観測を行うことが可能とされています。
現在ハッブル宇宙望遠鏡で使用されているジャイロスコープは、2009年5月に実施されたスペースシャトルによる5回目のサービスミッション(STS-125)で交換されたものです。この時に取り付けられたジャイロは全部で6基ありましたが、前述の通り今は3基が稼働しています。スペースシャトルは2011年7月に退役したため、ハッブル宇宙望遠鏡のサービスミッションはこの5回目が最後となりました。
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Source
- NASA - NASA’s Hubble Space Telescope Returns to Science Operations
文/sorae編集部