火星探査車「パーセベランス」を描いた想像図。SHERLOCはロボットアームの先端、黒丸で囲まれた部分に搭載されている(Credit: NASA/JPL-Caltech)

NASAでは現在、今年の7月~8月にかけて予定されている火星探査車「パーセベランス」の打ち上げに向けた準備が進められています。パーセベランスには幾つかの観測装置が搭載されていますが、そのうちの一つ「SHERLOC」(シャーロック)についての解説記事がNASAのジェット推進研究所(JPL)から公開されています。

■火星で生命の痕跡を探す「シャーロック」と「ワトソン」

パーセベランスに搭載される観測機器「SHERLOC」のエンジニアリングモデル(Credit: NASA/JPL-Caltech)

パーセベランスのロボットアーム先端に取り付けられている「SHERLOC」(※1)は、かつて火星に存在していたかもしれない生命の痕跡を探す上で重要な観測装置のひとつです。

SHERLOCには波長248.6nmの紫外線を利用したラマン分光装置が組み込まれていて、火星の岩に含まれる鉱物や有機化合物を識別することができます。研究者の興味をひく岩が見つかると、パーセベランスはSHERLOCに内蔵された紫外線レーザーを照射。研究者は岩からの散乱光を分析することで、そこに含まれている鉱物や有機化合物を分類し、岩が形成されたときの環境について理解することができます。

このSHERLOCには「WATSON」(※2)というカメラが組み込まれています。WATSONは岩の表面をクローズアップ撮影することが可能で、研究者はラマン分光装置による分析結果とWATSONによるクローズアップ画像を重ね合わせて参照し、岩のどこにどのような物質が含まれているかを把握できます。パーセベランスには将来地球へと回収されることを見越してサンプルを地表に残しておくための密閉容器が搭載されていますが、WATSONによる画像と組み合わされたSHERLOCの分析結果は、容器に封入するサンプルをどこから採取するかを決める上で役立ちます。

SHERLOCによる分析テストの結果を示した画像。WATSONによって撮影されたサンプルの画像に、表面で検出された鉱物の種類ごとに色分けされた分析結果が重ね合わされている(Credit: NASA/JPL-Caltech)

改めて説明する必要はないかもしれませんが、SHERLOCにWATSONという略称はアーサー・コナン・ドイルの推理小説に登場する探偵シャーロック・ホームズとそのパートナーであるジョン・ワトソン(ワトスン)に由来します。法医学を駆使して事件を解決に導いたホームズのように、SHERLOCは生命活動によって生み出された可能性がある有機化合物を求めて火星の地表を調査。そしてホームズの謎解きに協力したワトソンのように、WATSONはSHERLOCによる分析結果を支えるという関係です。

また、パーセベランスには観測装置の較正用ターゲットが幾つか車体に取り付けられていますが、そのなかにはNASAのジョンソン宇宙センターで開発された宇宙服用の生地やヘルメットの材料といった5つのサンプルが含まれています。これらのサンプルが火星の環境で風化する様子をSHERLOCで調べることで、将来の有人火星探査で用いられる宇宙服の設計に役立つ情報を得ることも予定されています。

※1…「Scanning Habitable Environments with Raman & Luminescence for Organics & Chemicals」の略
※2…「Wide Angle Topographic Sensor for Operations and eNgineering」の略

 

Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA/JPL
文/松村武宏

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