X線天文衛星「すざく」大気圏に再突入 科学観測終了から10年

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2025年1月8日、X線天文衛星「すざく(ASTRO-EII)」が大気圏に再突入したと発表しました。

日米で共同開発 目標寿命の5倍近くにわたって運用

観測を行うX線天文衛星「すざく(ASTRO-EII)」のイラスト(Credit: JAXA)
【▲ 観測を行うX線天文衛星「すざく(ASTRO-EII)」のイラスト(Credit: JAXA)】

2005年7月に「M-V」ロケットで打ち上げられた「すざく」は、遠方天体のX線観測や高温プラズマのX線分光観測を目的に、日本とアメリカの共同で開発された天文衛星です。観測装置として5台のX線望遠鏡「XRT」(口径40cm)の焦点面に高分解能X線分光器「XRS」と4台のX線CCDカメラ「XIS」を備えていた他に、硬X線検出器「HXD」を搭載していました(※ただしXRSは通常の科学観測を開始する前に冷却用の液体ヘリウムをすべて喪失)

「すざく」による観測を通じて、約6000万光年先の「おとめ座銀河団」の元素組成が内側から外側まで一定かつ太陽系周辺の組成とほぼ同じことや、約24億光年先の銀河「IRAS F11119+3257」では中心の超大質量ブラックホール(超巨大ブラックホール)が周囲の物質を取り込みつつ光速の約4分の1という速さで一部の物質を流出させてもいて、銀河の星形成活動に影響を及ぼしている可能性が示されるなどの科学的成果がもたらされています。

振動試験中のX線天文衛星「すざく(ASTRO-EII)」(Credit: JAXA)
【▲ 振動試験中のX線天文衛星「すざく(ASTRO-EII)」(Credit: JAXA)】

「すざく」の運用は目標寿命の2年を大きく上回りましたが、打ち上げから間もなく10年を迎えるタイミングの2015年6月から通信が不安定になったため科学観測を中断。老朽化によってバッテリーが機能しなくなった「すざく」は姿勢制御ができず約3分ごとに1回転していて、太陽電池に太陽光が当たる時だけ電源が入るような状態になったと推定されています。こうした状況からJAXAは「すざく」の科学観測再開は困難だと判断し、2015年8月に科学観測の終了が発表されていました。

JAXAによると、高度約550kmの円軌道に投入されていた「すざく」は大気の抵抗で徐々に高度が下がり続け、日本時間2025年1月5日23時41分頃に南太平洋の上空で大気圏に再突入したということです。

 

Source

  • JAXA/ISAS - X線天文衛星「すざく」(ASTRO-E II)の大気圏再突入について

文・編集/sorae編集部