NASA、火星の地表近くに埋蔵された氷に着目 火星有人探査に活用
火星の表面を掘削するNASAの宇宙飛行士の想像図(Image Credit:NASA)
火星の表面を掘削するNASAの宇宙飛行士の想像図(Credit: NASA)
火星の表面を掘削するNASAの宇宙飛行士の想像図(Credit: NASA)

NASAは2月8日、火星の北半球について、地表近くに埋蔵されていると推定される氷(water ice)の詳細で網羅的な分布地図を作成したと発表しました。NASAによれば、このように地表近くにある地下の氷の分布を明らかにしていくことは、将来的な有人火星探査などに大いに役立つといいます。

太古の火星は、地球に匹敵するほどの厚い大気に覆われ、温暖で、地表には大量の液体の水が存在したと考えられています。水の作用によってつくられた鉱物や流れる水の作用によってつくられたとみられる地形(河、湖、三角州など)などがたくさん発見されているためです。

しかし、現在、火星はかつての厚い大気を失い、冷たく乾燥し、その表面に液体の水は確認されていません。

では、かつて大量にあった液体の水はどこへいってしまったのでしょうか?

この点、火星から飛来した隕石や火星の大気の分析などから”一部は宇宙に逃げ、残りは地下に永久凍土などの形で残されている”と考えられています。

そして現在、NASAでは将来の火星有人探査をみすえて、この火星の地下の氷に注目しています。

例えば、火星有人探査のために火星に基地を設置するとします。このとき地表近くに地下の氷が存在する場所の周辺に設置するのがベストです。

なぜなら、氷は解かせば、飲料水になるだけではなく、食料の生産にも使えます。また、電気分解すれば呼吸するための酸素ロケットの燃料になる水素も得られます。

さらに、もし火星に微生物などの生命が存在する場合には、このような地下の氷のすぐ近くに存在する可能性が高いと考えられています。

そこで、NASAは、2015年から、NASAの火星周回探査機2001マーズ・オデッセイ、火星周回探査機マーズ・リコネッサンス・オービター、火星周回探査機マーズ・グローバル・サーベイヤー (現在運用終了)などのさまざまな観測機器から得られた20年分のデータ総合的に分析して、地表近くに埋蔵されていると推定される氷の詳細で網羅的な分布地図を作成しました。

NASAは、2024年に予定されている月面有人探査を足掛かりに、2030年代には火星有人探査の実現を目指しています。NASAでは、それに備えて、このように火星において地表近くにある地下の氷の分布を明らかにしていくことは、とても重要だと考えています。

もしかしたら、そう遠くない将来に、火星の地下にある氷の中から、微生物などの地球外生命が発見されるかもしませんね。

火星周回探査機マーズ・リコネッサンス・オービターにより撮影された画像。隕石の衝突により地下の氷が地表に露出しているのが解る(Credit:NASA/JPL-Caltech/Univ. of Arizona)
火星周回探査機マーズ・リコネッサンス・オービターにより撮影された画像。隕石の衝突により地下の氷が地表に露出しているのが解る(Credit:NASA/JPL-Caltech/Univ. of Arizona)

 

関連:NASAの探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が撮影し続けてきた火星の素顔

Image Credit: NASA/NASA/JPL-Caltech/Univ. of Arizona
Source: NASA論文
文/飯銅重幸