アメリカ地質学会は12月22日、カルフォルニア工科大学のジェイ・ディクソンさん率いる研究チームが高細密な河川のうねの全火星地図を世界で初めて作成したと発表しました。この河川のうねは太古の火星(30億年~40億年前)において河川によって運ばれた堆積物によって形成されたものです。研究チームではこの地図によってこれからの探査車や宇宙飛行士による火星探査に大きく貢献できるのではないかと期待しています。
かつて太古の火星には温暖で湿潤な気候だった時期があったと考えられています。水の作用によってつくられた岩石や水の流れによってつくられたとみられる地形(河川、湖、三角州など)などがたくさんみつかっているためです。
ところで、河川は地面を削るだけではありません。泥や砂、小石などさまざまなものを運び、堆積させます。そして、ときにこのような堆積物がうねのような地形をつくることがあります。
しかし、これまで、河川跡の地図はありましたが、このような河川のうねの全火星地図はありませんでした。
そこで、研究チームは、NASAの火星周回探査機マーズ・リコネッサンス・オービターの15年間に及ぶ画像データを3年近くかけてつなぎあわせて、高細密な河川のうねの全火星地図を作成しました。
河川のうねは河川が運んできた堆積物によってつくられています。そのため太古の火星の気候や地質について貴重なデータを提供してくれる可能性があります。
研究チームではこの地図によって今後の探査車や宇宙飛行士による火星探査に有益な情報を提供できるのではないかと期待しています。
NASAでは、現在、火星からのサンプルリターン計画を進めています。いわゆる「マーズ・サンプル・リターン(MSR)」計画です。
もしかしたら、サンプル採集地点の選定などに今回の河川のうねの全火星地図が大いに役立つかもしれませんね。
Image Credit: courtesy J. Dickson.
Source: アメリカ地質学会/論文
文/飯銅重幸