NASAの木星探査機「ジュノー」(左)と火星探査機「インサイト」(右)を描いた想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)

アメリカ航空宇宙局(NASA)は1月8日、現在火星と木星で行われている惑星探査ミッション2件の延長を発表しました。

1つは「InSight(インサイト)」による火星探査ミッションです。インサイトは火星内部の様子を明らかにすべく開発された探査機で、2018年11月に火星の赤道付近に広がるエリシウム平原に着陸しました。着陸後にロボットアームを使って地表へ設置された火星地震計「SEIS(Seismic Experiment for Interior Structure)」は、2019年4月に史上初の「火震」(火星の地震)の観測に成功しています。

インサイトのミッション期間は着陸から2年(火星における1年)の予定でしたが、今回の決定により2022年12月まで2年間延長されることになりました。延長後の拡張ミッションではさらに長い期間を対象とした高品質な火震のデータセット作成や、優先度は低いものの地中熱流量計測装置「HP3(Heat Flow and Physical Properties Package)」の地中センサー(通称「the mole(モール、もぐら)」)を地下に前進させる作業を継続する可能性があるとされています。

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もう1つは「Juno(ジュノー)」による木星探査ミッションです。2016年7月に木星へ到着したジュノーは、木星の大気や磁場、重力場などの観測を行っています。定期的に木星へ接近する軌道を周回するジュノーには各種観測装置とともに「JunoCam」と呼ばれるカメラが搭載されており、雄大な大赤斑や印象派絵画のような極域の渦など、木星のダイナミックな姿を地球に届けています。

ジュノーはもともと2018年中にミッションを終える予定でしたが、メインエンジンのトラブルを理由に軌道の変更が中止されたことで2021年7月まで一度延長されています。今回の決定により、ジュノーのミッションは最長で2025年9月まで(あるいはジュノーがミッションを遂行できなくなるまで)再び延長されることになりました。ジュノーの拡張ミッションでは引き続き木星の大気、磁場、磁気圏などの観測が予定されていて、大赤斑や北極を取り囲む複数のサイクロンなども対象となっています。また、木星の希薄な環を複数回通過することも計画されているといいます。

ジュノーのこれまでの軌道と今後の軌道を描いた図。1回目の近木点通過(PJ01)以降、灰色から紫色にかけて変化する軌道にあわせて3つの衛星のフライバイが計画されている(Credit: NASA/JPL-Caltech/SwRI)

注目はジュノーによる3つの衛星のフライバイです。NASAによると、木星を繰り返し周回するジュノーは木星に最も近づく近木点(PJ:perijove)が徐々に北へシフトする軌道を描いており、これを利用して木星北極域の観測を行いつつ衛星のガリレオ、エウロパ、イオにタイミング良く接近することが計画されています。各衛星のフライバイは今年2021年6月7日のガニメデに始まり、2022年9月29日にはエウロパ2023年12月30日と2024年2月3日にはイオに接近する予定とされています。

拡張ミッションでジュノーが取得したデータは、エウロパの探査を目的にNASAが準備を進めている探査機「エウロパ・クリッパー」や、欧州宇宙機関(ESA)が主導し宇宙航空研究開発機構(JAXA)も参加する木星氷衛星探査計画「JUICE」といった2020年代に打ち上げが計画されている探査機のミッションにも活かされる予定です。

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Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA (1) / NASA (2)
文/松村武宏

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