■木星の高高度ではアンモニア水の水滴と氷晶が雷を発生させている?
Heidi Becker氏(JPL:ジェット推進研究所、NASA)らの研究グループは、木星の高高度で観測された雷がアンモニア水を含む雲に由来することを示した研究成果を発表しました。
1979年に惑星探査機「ボイジャー」が観測して以来、木星の雷は地球と同じように水がその発生に関わっていると考えられてきました。研究グループによると、雷が発生している嵐は木星の雲頂から45~65kmの深さ(気温は水が凍る摂氏0度前後)に位置するとみられていましたが、NASAの木星探査機「ジュノー」が実施している木星の接近観測において、これよりもずっと高い高度で発生する小さな雷が捉えられたといいます。
Becker氏らがジュノーの観測データを分析したところ、この高高度の雷には水だけでなくアンモニアが関わっている可能性が示されました。発表によると、強い上昇気流によって水の雲から25km以上高いところまで吹き上げられた氷晶(水の氷の粒)が水の融点を下げるアンモニアの作用によって溶けることで、アンモニア水を含んだ雲が形成されるといいます。
研究グループでは、この雲から落下したアンモニア水の水滴が上昇してきた氷晶と衝突することで雲が帯電し、高高度で雷が生じていると考えています。Becker氏は「これには大変驚かされました。地球にはアンモニア水の雲が存在しないからです」とコメントしています。
■アンモニア水が核となって成長した雹が降っている可能性も
また、アンモニア水は高高度における雷だけでなく、アンモニアの循環にも関わっているとみられています。Tristan Guillot氏(コートダジュール大学)らの研究グループは、木星ではアンモニア水のスラッシュ(シャーベット状の氷)を核として成長した雹(ひょう)が降っているとする研究成果を発表しています。
Guillot氏らによると、地球において雹が成長するのと同じように、アンモニア水のスラッシュが気流に乗って雲の中を上下に移動するうちに、表面がだんだんと水の氷に覆われていくといいます。上昇気流で支えきれない重さにまで成長した雹は木星の深部へ向けて落下していき、やがて表面を覆う水の氷とアンモニア水の核が溶けて蒸発することで、水とアンモニアが木星大気の深部へもたらされると考えられています。
関連:木星大気の内側を「ラッキー・イメージング」を用いた赤外線画像で探る
Image Credit: NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS/Gerald Eichstädt
Source: NASA/JPL
文/松村武宏