
(引用元:ESA/Hubble)
夜空に輝く無数の星々のなかには、私たちの太陽がはるか遠い将来にたどる進化を考える手がかりを見せてくれる天体があります。
今回紹介するのは、ハッブル宇宙望遠鏡のACS(掃天観測用高性能カメラ)が撮影した、約1500光年先に位置する赤色巨星「ちょうこくしつ座R星(R Sculptoris)」です。画像中心の星は非常に明るいため、周囲の淡い構造を見やすくする目的で黒く遮蔽されています。その周囲に広がる、公開画像ではオレンジ色に表現された淡い構造は、この星が放出した物質に由来するもので、可視光では主に塵の分布が捉えられています。

ちょうこくしつ座R星は「漸近巨星分枝(AGB)星」と呼ばれる進化段階にあります。初期質量が約0.8〜8太陽質量程度の恒星は、晩年になると大きく膨張し、赤く冷えた巨星となって、強い恒星風によって外層のガスや塵を宇宙空間へ放出していきます。
太陽も約50億年後には主系列星としての寿命を終えて赤色巨星段階へ進み、そのさらに後にAGB段階に至ると考えられています。水星や金星はのみ込まれる可能性が高く、地球の運命にもなお不確実性があります。その後、太陽は外層を放出して惑星状星雲を形づくり、中心には白色矮星が残るとみられています。そうした意味で、ちょうこくしつ座R星の姿は、太陽系のはるか遠い未来を考えるうえでの手がかりのひとつといえます。
この星をとくに興味深くしているのが、約1800年前に起きたとみられる「熱パルス」の痕跡です。熱パルスとは、AGB星の内部でヘリウム殻燃焼が不安定化して起こる現象で、短期間に大量の物質放出を引き起こします。ちょうこくしつ座R星では、この熱パルスが約200年間続いたと考えられており、そのときに放出された物質が現在も薄い殻のように星を取り囲んでいます。
そして2012年、アルマ望遠鏡による電波観測から、放出されたガスが単なる球殻ではなく、渦巻き状の構造を描いていることが明らかになりました。この渦巻き構造は、直接確認されていないものの、伴星の存在とその重力の影響によってガスの流れが形作られた結果だと考えられています。
編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- NASA Science "Hubble Gazes at R Sculptoris and its Hidden Companion"
- ALMA Observatory "Surprising Spiral Structure Spotted by ALMA"
- Maercker et al., Nature 2012(PDF)










