
こちらは「ろ座(炉座)」の一部を捉えた画像。幅が満月の視直径の13分の1程度(視野は2.3×2.0分角)というごく狭い範囲に写っている天体は、ほぼすべてが銀河。NASA=アメリカ航空宇宙局によると、その数は約5500個に達します。地球から見た月の海ひとつと同じくらいの範囲に数千の銀河……全天では一体いくつになるのかと思うと、頭がクラクラしてきます。

初期宇宙の銀河を探るためにハッブル宇宙望遠鏡で長時間の観測を実施
この画像は「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope: HST)」の「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」と「広視野カメラ3(WFC3)」で取得したデータを使って作成されたもので、「ハッブル・エクストリーム・ディープ・フィールド(Hubble eXtreme Deep Field: XDF)」と呼ばれています。
観測は2002年7月から2012年3月の10年間にわたって行われていて、総露光時間はなんと22日半(約200万秒)、この1点の画像を作成するのに使われたデータは2000点以上もあります。観測の長さとデータの量にも驚きです。
なぜそこまでしてXDFの観測が行われたのか、それはより古い時代の銀河を観測するためです。光の速度は有限なので、何十億年もの時間をかけて地球に光が届くほど遠い天体を観測することは、何十億年も昔の天体を観測することと同じです。ただし、天体は遠ければ遠いほど小さく、暗く見えます。より古い時代の天体を観測するには、鋭敏な望遠鏡で長時間の露光を行う必要があるのです。
NASAによると、ここには今から約132億年前の初期宇宙に存在していた銀河も写っています。1990年4月にハッブル宇宙望遠鏡が打ち上げられるまでは良くても70億年前の銀河までしか観測できなかったといいますから、そこからさらに60億年も遡ることが可能になったわけです。
その後もハッブル宇宙望遠鏡の観測データからは約26万5000個の銀河を捉えた「ハッブル・レガシー・フィールド(Hubble Legacy Field: HLF)」などが作成されています。XDFを含むこれらの画像は、天文学者にとって夢がかなったことの象徴のひとつと言えるでしょう。
冒頭の画像はNASAから2012年9月25日付で公開されたもので、2025年4月のハッブル宇宙望遠鏡打ち上げ35周年を記念して改めてNASAが紹介しています。

Taking it to the extreme.
The eXtreme Deep Field, or XDF, was released during Hubble's 23rd year but contains a decades worth of data.
XDF is a small patch of sky, yet it holds over 5,500 galaxies: https://t.co/37HNC4kCVc pic.twitter.com/cIOTtUzBuM
— Hubble (@NASAHubble) April 11, 2025
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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