こちらは、「ハッブル」宇宙望遠鏡によって取得された数多くのデータのうち、南天の「ろ座」の方向を撮影したおよそ7500点を合成処理した画像です。「ハッブル・レガシー・フィールド(Hubble Legacy Field)」の名が付けられました。
組み合わせに用いられた16年分の画像のなかには、2012年に公開された「ハッブル・エクストリーム・ディープ・フィールド(Hubble eXtreme Deep Field)」の範囲も含まれています。最も遠く暗い銀河の明るさは、人間の目で見える明るさの100億分の1しかありません。
驚くことに、NASAの発表によれば、満月1つ分ほどの範囲を写したこの画像には、実に26万5000もの銀河が含まれています。繰り返しますが、恒星の数ではなく、銀河の数です。1つの銀河には数千億の恒星があると考えられていますから、それをもとに恒星の数に換算すれば、兆を超えて京の位に達します。
数だけではありません。ここに写っている最も遠い天体までの距離は、およそ133億光年。遠い天体ほど過去の姿で見えているという点を踏まえれば、この画像にはビッグバンから5億年しか経っていない133億年前から現在まで、宇宙の長い歴史を示す天体が大量に写っていることになるのです。
なお、こちらのリンク先( https://www.spacetelescope.org/images/heic1909a/ )では、欧州宇宙機関(ESA)によって公開されているハッブル・レガシー・フィールドのより大きなサイズの画像を開くことができます。筆者は109.7MBのJPG画像(およそ2万ピクセル四方)を選んでみましたが、さまざまな形の銀河がどこを拡大しても必ず写っています。あまりのスケールに、ため息ばかりが出てしまいました。
ところが、ハッブル・レガシー・フィールドは1枚きりの画像ではないようです。今回の画像を作成したカリフォルニア大学サンタクルーズ校のGarth Illingworth氏が率いるチームはすでに、これとは別に5200点以上のデータを集めた2枚目の画像に取り組んでいるとされています。
「これを超える画像は、ジェイムズ・ウェッブのような将来の宇宙望遠鏡が現れるまで存在しない」と語るIllingworth氏。逆に言えば、現在開発が進められている「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡なら、ハッブルを超える画像も撮影できるということ。2021年3月に打ち上げが予定されているジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の活躍も楽しみです。
Image credit: NASA, ESA, G. Illingworth and D. Magee (University of California, Santa Cruz), K. Whitaker (University of Connecticut), R. Bouwens (Leiden University), P. Oesch (University of Geneva), and the Hubble Legacy Field team.
https://www.spacetelescope.org/news/heic1909/
文/松村武宏