恒星の輝きが引き立てる銀河の優雅な姿 ハッブル宇宙望遠鏡が観測した「NGC 5530」

こちらは「おおかみ座(狼座)」の方向約4000万光年先の渦巻銀河「NGC 5530」です。明るい中央部分を取り囲む渦巻腕(渦状腕)は幅広で、全体的に柔らかな印象を受ける銀河です。

ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の広視野カメラ3(WFC3)で観測された渦巻銀河「NGC 5530」(Credit: ESA/Hubble & NASA, D. Thilker)
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の広視野カメラ3(WFC3)で観測された渦巻銀河「NGC 5530」(Credit: ESA/Hubble & NASA, D. Thilker)】

4000万光年先の銀河を飾る天の川銀河の恒星の輝き

そんなNGC 5530の中央付近には、針状の光をともなう1つの明るい光点が見えています。もしや超新星爆発の光……と思うかもしれませんが、これは天の川銀河の恒星「UCAC4 234-072090」で、地球からの距離は約1万光年です。背景で渦巻くNGC 5530から届いた光は、この恒星から届いた光よりも4000万年ほど古い時代に発せられたものなのです。

この画像は「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope: HST)」の「広視野カメラ3(WFC3)」で取得した観測データを使って作成されました。ハッブル宇宙望遠鏡による最近のNGC 5530の観測は、宇宙のあらゆる時代において銀河の成長と進化を促進する重要なプロセスであるガスの流れ・星形成・フィードバックのサイクルを解明するために、近隣の55の銀河を観測する調査の一環として2025年1月と2月に実施されています。

ちなみに、NGC 5530と重なって見えている天の川銀河の恒星から四方に伸びる針状の光は回折スパイク(diffraction spike)と呼ばれるもので、望遠鏡の構造(ハッブル宇宙望遠鏡の場合は副鏡を支える梁)で光が回折することで生じています。ハッブルの画像ではよく見かける回折スパイク、この画像ではNGC 5530の優雅さを引き立てる良いアクセントになっていると思いませんか?

冒頭の画像は“ハッブル宇宙望遠鏡の今週の画像”として、ESAから2025年3月24日付で公開されています。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典