入れ子グラバスター「ネスター」を提案

Jampolski氏とRezzolla氏は、アインシュタイン方程式を解くことでグラバスターの性質を調べる研究を行いました。今回の研究に限らず、アインシュタイン方程式は重力に関する様々な洞察を提供しますが、数学的に解くことは難しいものです。このため、新たな解き方によってこれまでに知られていない天体の性質が現れることもあります。

両氏はアインシュタイン方程式を解くことで、グラバスターの内部に別の物質の層をおいても安定して存在できることを示しました。つまり、グラバスターの中に別のグラバスターが入っていても、そのような天体は安定して存在できるということになります。また、この層は2枚重ねに限らず、任意の枚数だけ重ねることが可能であることを示しました。まるでマトリョーシカ人形のように、いくつものグラバスターが入れ子 (nest) 構造になっていることから、両氏はこの天体を「ネスター(Nestar)」と名付けました。

現段階では、ネスターが理論的に存在可能であることを示しただけで、実際にこの宇宙に存在するかどうかは不明です。また、仮にネスターが存在したとしても、その生成過程は不明です。それでも、重力理論を解くことでネスターのような興味深い存在が出現するということは、数学的に探索されていない重力理論の領域がまだまだ存在することを示しています。ネスターの研究は、グラバスターやブラックホールに関する新たな理解に繋がるでしょう。

 

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文/彩恵りり