ブラックホールの代替天体「グラバスター」

「グラバスター(Gravastar)」は、提案されているブラックホール代替天体の1つです。2001年にPawel O. Mazur氏とEmil Mottola氏によって提案されたグラバスターは “gravitational vacuum star(重力真空星)” を合成した名前です。

少なくとも、グラバスターの外見的な特徴はブラックホールそっくりです。グラバスターの周りは重力が非常に強く、表面は真っ黒に見えるでしょう。このため、ブラックホールでしか説明できない天文現象を、そのままグラバスターに置き換えても成立します。

一方で、グラバスターの内部の様子はブラックホールとは全く異なります。グラバスターの中心には重力とは反対の性質を持つ力である暗黒エネルギー(ダークエネルギー)が詰まっており、無限に潰れることを回避し、特異点が生じることを防いでいます。グラバスターの名に “真空” が含まれているのは、暗黒エネルギーの別名が真空のエネルギーであることに由来します。

また、ブラックホールには事象の地平面という一方通行の境界がありますが、グラバスターにはありません。その代わり、グラバスターの表面には非常に薄い物質の層があり、その厚さはゼロに限りなく近いと考えられます。