謎多きオーロラの発生メカニズム。プラズマ物理学で謎を1つ解明
アラスカのフェアバンクスの北にあるポーカーフラットリサーチレンジにて2017年2月16日の夜に観測されたオーロラの画像。(Image Credit:NASA/Terry Zaperach)

アメリカ航空宇宙局(NASA)は2021年6月8日、アイオワ大学の研究チームが長年謎とされていたオーロラの発生メカニズムの一部を解明したと発表しました。

この研究は、NASAからの資金提供を受けて行われ、その成果は『Nature Communications』誌に掲載されました。

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解明されたオーロラの謎とは何か?

オーロラは、地球の磁気圏の夜側に蓄積された太陽風由来の荷電粒子、特に電子が、何らかのメカニズムで加速され、地球の大気と衝突することで発生します。しかし、これまでこの電子がどのように加速されるのか、その具体的なメカニズムは完全には理解されていませんでした。

NASAのMMS衛星群や、運用が終了したPolarやFASTなどの人工衛星による観測から、アルヴェーン波による加速が示唆されていましたが、人工衛星による測定の限界から決定的な証拠は得られていませんでした。

アルヴェーン波による電子の加速を実験的に立証

アルベーン波による電子の加速を解りやすく解説したイラスト(Credit: the University of Iowa Illustration by Austin Montelius.)
【▲ アルベーン波による電子の加速を解りやすく解説したイラスト(Credit: the University of Iowa Illustration by Austin Montelius.)】

物質は温度の上昇に伴い、固体、液体、気体、そしてプラズマへと状態を変化させます。プラズマ内でも、他の状態と同様にさまざまな波が伝わります。アルヴェーン波は、磁場が存在するプラズマ中を磁力線に沿って伝わる波の一種です。

研究チームは、アイオワ大学のグレッグ・ハウズ准教授を中心に、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の大型プラズマ装置(Large Plasma Device)を使用して、制御されたプラズマ環境下でアルヴェーン波が電子に与える影響を精密に調査しました。地球磁気圏でオーロラを発生させるのと同様の条件下で、アルヴェーン波によって電子が加速される物理的メカニズムを実験的に立証したのです。

NASAによれば、このメカニズムはサーフィンのようなものだと言います。サーファーが波に乗って加速するように、電子もアルヴェーン波に乗り、そのエネルギーを得て加速します。

今回の研究成果は、地球周辺の宇宙空間における物理モデルの改善や、より高度な観測装置の開発に寄与すると期待されています。NASAは今後も地球近傍の宇宙空間の探査を進め、宇宙天気予報の精度向上や宇宙物理学の理解を深めることを目指しています。

アラスカのフェアバンクスの北にあるポーカーフラットリサーチレンジにて2017年2月16日の夜に観測されたオーロラの画像(Credit: NASA/Terry Zaperach)
アラスカのフェアバンクスの北にあるポーカーフラットリサーチレンジにて2017年2月16日の夜に観測されたオーロラの画像(Credit: NASA/Terry Zaperach)

 

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Source

  • Image Credit: NASA/Terry Zaperach/the University of Iowa Illustration by Austin Montelius.
  • NASA - Lab Experiments Shed New Light on NASA Satellite Observations
  • アイオワ大学

文/飯銅重幸 編集/sorae編集部