
こちらは「うみへび座(海蛇座)」の方向約4800万光年先の渦巻銀河「NGC 5042」です。赤・青・黄の三色で染め上げられたようなその姿からは、明るい中心部分からその周りに広がる渦巻腕(渦状腕)まで、全体的に淡く柔らかな印象を受けます。

美しくも変わりゆく銀河の一瞬を捉えたスナップショット
NGC 5042の渦巻腕を彩る青色と赤色には密接な関係があります。青色は若く高温の大質量星から放射された光。赤色は大質量星の放つ紫外線によって電離した水素ガスが光を放っている「HII(エイチツー)領域」です。HII領域はガスと塵を材料に星が形成される星形成領域でもあり、新たな星が誕生する現場であることから“星のゆりかご”と呼ばれることもあります。
画像を公開したESA=ヨーロッパ宇宙機関(欧州宇宙機関)によると、HII領域を形成できるほど質量が大きな星の寿命は、宇宙の長い歴史と比べればごく短い数百万年程度。私たちが観測しているのは、太く短い生涯を過ごす大質量星がその力強い輝きで作り出した束の間の光景、その一瞬を捉えたスナップショットとも言えるのです。
この画像は「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope: HST)」の「広視野カメラ3(WFC3)」による観測データをもとに作成されたもので、ESA から“ハッブル宇宙望遠鏡の今週の画像”として2025年3月3日付で公開されました。
ハッブル宇宙望遠鏡による最近のNGC 5042の観測は、宇宙のあらゆる時代において銀河の成長と進化を促進する重要なプロセスであるガスの流れ・星形成・フィードバックのサイクルを解明するために、近隣の55の銀河を観測する調査の一環として2025年1月に実施されています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- ESA/Hubble - A spiral of the water snake