火星のキュリオシティが撮影した18億ピクセルの高解像度パノラマ画像

2012年8月の探査開始から今年で8年目を迎えるNASAの火星探査車「キュリオシティ」。昨年の秋にキュリオシティによって撮影された画像をもとに作成された、過去最高の解像度となる火星のパノラマ画像が公開されています。

■Mastcamで撮影された1000枚以上の画像を合成

Mastcamの望遠カメラで撮影した複数の画像をもとに作成されたパノラマ画像(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)

こちらが今回公開されたパノラマ画像。キュリオシティの「頭」に搭載されている「Mastcam」の望遠カメラを使って撮影された1000枚以上の画像をもとに、数か月の時間をかけて作成されました。複数の画像を組み合わせているので、キュリオシティの車体付近や空の高いところといった、撮影できなかった部分との境目が階段状になっています。

soraeで掲載している画像は縮小しているので実感しにくいものの、元の画像を拡大してみると、斜面に露出した層状の模様やあちこちに転がっている小石、ひび割れたように見える地面の明るい岩、吹き溜まった暗い色の砂などが、とてもはっきりと写し出されています。奥のほうではキュリオシティが活動するゲール・クレーターの縁(外輪山)が、遠くにかすむ稜線を描き出しています。

NASAが公開している特設ページで拡大した様子。手前の地面から遠くクレーターの縁までが精細に写し出されている(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)

今回作成されたパノラマのピクセル数は、実に18億ピクセルに達します。4K解像度のピクセル数が830万ピクセル弱なので、「4Kテレビおよそ217台分」と表現すればなんとなく想像ができるでしょうか。元になった画像が撮影されたのは2019年11月末頃で、総撮影時間は6時間半以上に及んだといいます。明るい画像を撮るために撮影時間が現地の正午から午後2時までのあいだに制限されていたため、必要な画像を揃えるのに4日間を要しました。

また、望遠カメラの隣に搭載されている広角カメラで同時に撮影された画像を使った低解像度バージョン(といっても6億5000万ピクセルほど)も公開されています。こちらは望遠カメラよりも画角が広いので、キュリオシティの車体やロボットアームといったより広い範囲が写っています。NASAが公開している特設ページでは、望遠カメラと広角カメラの両バージョンをブラウザ上で拡大・縮小したり、自由に動かして見たい場所を眺めたりすることができます。

2019年2月の火星探査車「オポチュニティ」の運用終了以来、キュリオシティは火星で唯一稼働する探査車として活動を続けてきました。予定通りに進めば来年2021年2月に新しい火星探査車「パーセベランス」がジェゼロ・クレーターに到着し、久しぶりに複数の探査車が火星の表面で探査活動を行う時がやってきます。

同時に公開された、広角カメラを使った低解像度バージョン(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)

 

Image Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS
Source: NASA / パノラマ画像の特設ページ
文/松村武宏