※オールトの雲の直径について単位に誤りのある箇所がありました。訂正の上、お詫び申し上げます。【5月25日21時30分追記】

先日地球の近くを通過していった「1998 OR2」のように、将来地球と衝突する可能性がある小惑星が近年では幾つも見つかっています。いっぽう、空間と時間のスケールを大きく広げてみると、太陽から比較的近いところを通過していく、あるいは過去に通過したことがあるとみられる恒星が幾つか割り出されています。惑星、恒星、銀河といったスケールの違いはあっても、天体どうしの接近はめずらしい出来事ではないようです。

■7万年前に小さな連星が1光年以内まで接近していた

赤色矮星(中央)と褐色矮星(右手前)から成る連星「ショルツ星」を描いた想像図。背景の左側で輝いているのは太陽(Credit: Michael Osadciw/University of Rochester)

天の川銀河には1000億個の星々があるとされていますが、その移動方向や速度は星によって異なります。地球から見た星の位置も少しずつ変化しているため、古代の人々が見上げた星空と、私たちがいま見ている星空では星の並びも異なります。

「いっかくじゅう座」の方向およそ20光年先にある「ショルツ星」は、赤色矮星と褐色矮星(質量はそれぞれ太陽の約8パーセントと約6パーセント)から成るとみられる連星です。2015年に発表されたEric Mamajek氏らの研究によると、観測データをもとに逆算した結果、ショルツ星は今からおよそ7万年前に太陽から約0.8光年(およそ5万2000天文単位)のところを通過していったとされています。

現在太陽から最も近い恒星であるプロキシマ・ケンタウリまでの距離がおよそ4.24光年とされていますから、ショルツ星はその5分の1以下のところまで太陽に近づいたことになります。Mamajek氏らは、ショルツ星が長周期彗星の起源と考えられている太陽系のオールトの雲(最大で直径10万天文単位と推定)の外部領域をかすめていった可能性を指摘しています。

なお、小さく暗いショルツ星は最接近時でも10等程度の明るさだったとみられていますが、赤色矮星では強力なフレアが発生することが知られています。ショルツ星もフレアが発生すれば数千倍明るくなる可能性があるため、発表では数分から数時間に渡りフレアで増光したショルツ星を当時の人類が目にしていた可能性にも言及しています。

■平均して5万年ごとに1つの恒星が太陽に近づくとみられる

もしも最接近前後のショルツ星でフレアが起きていたら、7万年前の人類がその様子を目撃していたかもしれない(Credit: José A. Peñas/SINC)

太陽と他の恒星の接近はショルツ星が唯一の例ではありません。Coryn Bailer-Jones氏は2017年に発表した研究において、欧州宇宙機関(ESA)の宇宙望遠鏡「ガイア」の観測によって得られた恒星の動きをもとに、太陽から1パーセク(約3.26光年)以内の距離を通過していく恒星の数は100万年あたり約19.7個と推定しています。平均すると、約5万年ごとに1つの恒星が太陽から3光年強以内まで近づくことになります。

今後太陽に接近する可能性が示されている恒星のうち、最も近づくとみられているのは「グリーゼ710」です。現在のグリーゼ710は「へび座」(尾部)の方向およそ62光年先にありますが、2016年に発表されたFilip Berski氏らの研究では、今から135万年後にグリーゼ710が太陽から1万3400天文単位ほどの距離まで接近する可能性が示されています。この接近ではオールトの雲も大きな影響を受けるとみられていて、太陽系の内部へ入り込む彗星の数が増えることも予想されています。

今のグリーゼ710は肉眼では見えない10等星ですが、最接近時には現在のシリウス(マイナス1.46等)をしのぐマイナス2.7等という明るさで見えると予想されています。135万年後の地球がどのような世界になっているのかはわかりませんが、グリーゼ710の接近はまれに見る天体ショーとして人々の目を楽しませることになるのかもしれません。

 

Image Credit: Michael Osadciw/University of Rochester
Source: ロチェスター大学 / Astronomy.com / A&A(1) / A&A(2)
文/松村武宏

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