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NASAが「アルテミスIII」のクルーを発表 2027年に地球低軌道で月着陸船のテスト実施へ

NASA(アメリカ航空宇宙局)は2026年6月9日付で、アメリカ主導の有人月探査計画「Artemis(アルテミス)」のもとで2027年に実施が予定されている「Artemis III(アルテミスIII)」ミッションのクルーを発表しました。2026年4月に実施された「Artemis II(アルテミスII)」に続くArtemis IIIは、人類の月への回帰に向けた重要なステップとなります。

プライムクルーはNASAとESAから選ばれた4名

今回発表されたのは、4名のプライムクルーと1名のバックアップクルーです。

2027年実施予定の「Artemis III(アルテミスIII)」ミッションのプライムクルー。左から:NASAのAndre Douglas宇宙飛行士(ミッションスペシャリスト)、ESAのLuca Parmitano宇宙飛行士(パイロット)、NASAのRandy Bresnik宇宙飛行士(コマンダー)、NASAのFrank Rubio宇宙飛行士(ミッションスペシャリスト)(Credit: NASA/Bill Stafford)
【▲ 2027年実施予定の「Artemis III(アルテミスIII)」ミッションのプライムクルー。左から:NASAのAndre Douglas宇宙飛行士(ミッションスペシャリスト)、ESAのLuca Parmitano宇宙飛行士(パイロット)、NASAのRandy Bresnik宇宙飛行士(コマンダー)、NASAのFrank Rubio宇宙飛行士(ミッションスペシャリスト)(Credit: NASA/Bill Stafford)】

コマンダーを務めるのは、NASAのRandy Bresnik宇宙飛行士です。元アメリカ海兵隊のテストパイロットで、2004年にNASAの宇宙飛行士として選抜されました。2009年にスペースシャトル「Atlantis(アトランティス)」によるSTS-129ミッションと、2017年にISS(国際宇宙ステーション)で第52次/第53次長期滞在を経験しており(第53次ではISSコマンダーを務める)、Artemis IIIが3回目の宇宙飛行となります。通算で5回の船外活動(EVA)を経験しており、近年は探査部門の宇宙飛行士室長補佐として、Artemis計画のシステム開発や試験を監督してきました。

パイロットを務めるのは、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)のLuca Parmitano宇宙飛行士です。元イタリア空軍のテストパイロットで、2013年の第36次/第37次と2019年~2020年の第60次/第61次の2度にわたって、ISSでの長期滞在を経験しています(第61次ではイタリア人初のISSコマンダーを務める)。Artemis IIIが3回目の宇宙飛行となりますが、Artemis計画でESAの宇宙飛行士がクルーにアサインされるのはParmitano宇宙飛行士が初めてです。

ミッションスペシャリストの1人目は、NASAのAndre Douglas宇宙飛行士です。元アメリカ沿岸警備隊のエンジニアであり、ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所では自律型無人潜水機や、「DART(二重小惑星方向転換試験)」ミッションなどの宇宙探査システム開発に携わりました。先のArtemis IIミッションではバックアップクルーを務めて訓練を重ねており、Artemis IIIが初の宇宙飛行となります。

もう1人のミッションスペシャリストは、NASAのFrank Rubio宇宙飛行士です。元アメリカ陸軍のヘリコプターパイロットであり、家庭医(board-certified family physician)と航空医官の資格を有します。2022年~2023年にかけてISSで第67次/第68次/第69次長期滞在を行い、アメリカ人宇宙飛行士として最長となる371日間の連続宇宙滞在記録を樹立しました。Artemis IIIは2回目の宇宙飛行となります。

また、上記の4名とともに訓練を行うバックアップクルーには、NASAのBob Hines宇宙飛行士がアサインされました。元アメリカ空軍のテストパイロットであり、2022年にISSで第67次/第68次長期滞在を経験しています。

地球低軌道で月着陸船をテスト

Artemis IIIは、新型宇宙船「Orion(オリオン、オライオン)」と、Blue Origin(ブルー・オリジン)社およびSpaceX(スペースX)社が開発中の月着陸船「HLS(有人着陸システム)」とのランデブーおよびドッキング能力を地球低軌道で実証するミッションです。

もともと2027年にはArtemis計画初の有人月面着陸が行われる予定でしたが、着陸を2028年予定の「Artemis IV(アルテミスIV)」ミッションに先送りした上で、Artemis IIIの役割を“有人月面着陸を確実に成功させる上で不可欠なテストミッション”へと変更することが、2026年2月に発表されました。

NASAによると、Artemis IIIではまずBlue Originの月着陸船「Blue Moon(ブルームーン)Mark 2」の試験機が打ち上げられ、軌道上で待機します。続いてクルーを乗せたOrion宇宙船が大型ロケット「SLS(スペース・ローンチ・システム)」で打ち上げられて、待機していたBlue Moonとドッキングし、着陸船への乗り込みを含めた技術実証を約2日間かけて行います。

Blue Moonでの実証が終わると、Orion宇宙船はドッキングを解除し、SpaceXの月着陸船「Starship(スターシップ)HLS」の試験機を待ちます。Starshipの打ち上げ後はOrion宇宙船がドッキングして、約1日間の技術実証を行った後に、太平洋へ着水して帰還します。ミッション全体の期間は約2週間の予定ですが、打ち上げや軌道上での状況に応じてリアルタイムで決定されるということです。

NASAによれば、Artemis IIIミッション向けのハードウェアの準備は着実に進んでいます。2026年夏にはオリオン宇宙船のクルーモジュールとサービスモジュールの結合が行われるほか、SLSのコアステージ(1段目)へのエンジン搭載も予定されています。また、Blue OriginとSpaceXも試験機の製造を急ピッチで進めています。

Artemis(アルテミス)計画を表現したイメージイラスト。2026年4月に実施されたArtemis II(上段)は有人飛行試験として月周辺への往復飛行、2027年実施予定のArtemis III(中段)は有人月着陸船の地球低軌道でのテスト、2028年のArtemis IV以降(下段)は年1回以上のペースを目指して有人月面着陸を実施する予定であることが描かれている(Credit: NASA)
【▲ Artemis(アルテミス)計画を表現したイメージイラスト。2026年4月に実施されたArtemis II(上段)は有人飛行試験として月周辺への往復飛行、2027年実施予定のArtemis III(中段)は有人月着陸船の地球低軌道でのテスト、2028年のArtemis IV以降(下段)は年1回以上のペースを目指して有人月面着陸を実施する予定であることが描かれている(Credit: NASA)】

2028年の有人月面着陸実施を見据えて

NASAのJared Isaacman長官は、Artemis IIIミッションについて「複雑なランデブーとドッキング操作をテストし、将来太陽系のさらに深部へと私たちを運ぶ技術を前進させることで、アメリカのイノベーションと国際的なパートナーシップの力を実証するものになる」と述べています。

地球低軌道で月着陸船の実証を行うArtemis IIIは、Artemis IVにおける月の南極域への有人着陸を成功させるうえで重要なプロセスです。新たな宇宙探査の黄金時代を切り拓くミッションに、今から期待が高まります。

【▲ Artemis IIIミッションの紹介動画(英語)(Credit: NASA)】

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典