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ガスを失いながら銀河団中心を目指す旅路 ハッブル宇宙望遠鏡が観測した渦巻銀河「M88」

こちらは、ハッブル宇宙望遠鏡が観測した渦巻銀河「M88(Messier 88)」。かみのけ座の方向、約6300万光年先にあります。

Hubble(ハッブル宇宙望遠鏡)のWFC3(広視野カメラ3)で観測した渦巻銀河「M88(Messier 88)」(Credit: ESA/Hubble & NASA, D. Thilker and the MAUVE-HST Team)
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡のWFC3(広視野カメラ3)で観測した渦巻銀河「M88(Messier 88)」(Credit: ESA/Hubble & NASA, D. Thilker and the MAUVE-HST Team)】

中心に巨大なブラックホールを抱いた活動銀河

M88は活動銀河核(AGN)を持つ活動銀河のひとつとして知られています。活動銀河核は強い電磁波が観測される銀河中心部の狭い領域のことで、その原動力は太陽の数百万倍~数十億倍の質量がある超大質量ブラックホール(超巨大ブラックホール)だと考えられています。

M88の場合、中心のブラックホールの質量は太陽の約1億倍に達すると推定されています。このブラックホールは周囲からガスや塵(ダスト)といった物質をさかんに取り込んでいるだけでなく、銀河の中心から吹き出すアウトフロー(強力なガスの流れ)の動力源にもなっていると考えられています。

画像を見ると、M88の中心部には古くて赤みがかった星々が集まり、暖かみを感じさせる輝きを放っています。その外側では、対称的でしっかりと巻き付いた渦巻腕(渦状腕)が広がっており、青色に輝く星団や、若い高温の星によって電離した水素が光を放っているピンク色の電離水素領域、ほつれた糸をより合わせたような暗い塵の雲に彩られています。

おとめ座銀河団の中心を目指す旅と「ラム圧」の影響

ESA(ヨーロッパ宇宙機関)によると、M88は1000以上の銀河が重力で結びついた「おとめ座銀河団」に属しており、現在は銀河団の中心に向かって長い旅を続けています。現在観測されている状態からおよそ2億年から3億年後には、銀河団の中心に位置する巨大な楕円銀河「M87」に最接近すると予測されています。

この移動の過程で、M88は「ラム圧ストリッピング(動圧によるガスの剥ぎ取り)」と呼ばれる過酷な現象を経験します。これは、銀河が銀河団を満たす高温ガスの中を高速で移動する際に、向かい風のような強い圧力を受けて、銀河自身が持っているガスを後方へ吹き飛ばされてしまう現象です。

これまでの研究によれば、M88ではすでにこの現象が進行していることが確認されています。特に外縁部では、星の材料となる低温のガスが、同規模の一般的な銀河と比べて著しく少なくなっているといいます。おとめ座銀河団の中心へ向かう旅の途中でM88はその姿を大きく変えていき、今後の星形成活動や銀河の進化のプロセスに対して大きな影響を受けることになるとみられています。

冒頭の画像はESA/Hubbleから2026年5月29日付で公開されています。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典