
NASA(アメリカ航空宇宙局)は現地時間2026年2月17日、有人月周回ミッション「Artemis II(アルテミスII)」に向けて通算2回目となる打ち上げ前の地上試験「ウェット・ドレス・リハーサル」のカウントダウンを開始したと発表しました。

本番さながらの「ウェット・ドレス・リハーサル」とは
ウェット・ドレス・リハーサル(WDR:Wet Dress Rehearsal)は、ロケットの打ち上げにおいて重要なマイルストーンとなる地上試験です。ウェット(Wet)は液体の推進剤(燃料と酸化剤)を意味しており、実際に極低温の推進剤をロケットに充填することからこう呼ばれています。
NASAによると、今回のWDRではケネディ宇宙センター(フロリダ州)の打ち上げチームやジョンソン宇宙センター(テキサス州)のミッションコントロールセンターを含む支援チームが連携し、一連の運用手順を確認します。これには、極低温推進剤の充填、打ち上げカウントダウンの進行、カウントダウンクロックのリサイクル(巻き戻し)、そして打ち上げ中止手順の予行としてタンクから推進剤を排出する作業までが含まれます。
なお、Artemis IIの打ち上げに向けたWDRは今回が2回目の実施となります。前回のリハーサルでは液体水素の漏洩が発生したため、試験を完了できずに中断されていました。今回はその不具合に対処した上での再挑戦となります。
カウントダウンから打ち上げシミュレーションまで
NASAによると、第2回WDRのカウントダウンクロックはアメリカ東部標準時2026年2月17日18時50分(日本時間2026年2月18日8時50分、模擬打ち上げの49時間40分前)に動き出しました。
シミュレーション上の打ち上げ日時は2月19日20時30分に設定されており、試験全体の終了は2月20日0時30分頃が見込まれています(いずれもアメリカ東部標準時)。打ち上げに関わるスタッフは約2日間にわたり、昼夜を通して手順の確認を行います。
推進剤の充填とターミナルカウントの手順検証
WDRで特に重要なのは、新型宇宙船「Orion(オリオン、オライオン)」を搭載した大型ロケット「SLS(スペース・ローンチ・システム)」への推進剤充填です。
SLSのコアステージ(1段目)および上段ステージ(2段目)には、燃料の液体水素と酸化剤の液体酸素が実際に充填されます。これらの推進剤は極低温であるため、機体や地上設備が充填時の熱収縮や圧力変化に正常に対応できるか、また推進剤の漏洩がないかを入念にチェックすることが、WDRにおける主な目的の一つとなります。
また、打ち上げ直前の「ターミナルカウント」と呼ばれる最終秒読み段階の検証も重要です。NASAは今回のリハーサルで、実際の本番で起こりうるトラブルを想定した複雑なシーケンスを計画しています。
計画では、まず発射1分30秒前でカウントを一時停止し、最大3分間の待機(ホールド)を行います。その後カウントを再開し、発射33秒前まで進めたところで再び停止。カウントダウンを発射10分前まで巻き戻す「リサイクル」手順を実施します。
その後、2回目のターミナルカウントを発射33秒まで進めた時点でシーケンスは終了される予定です。NASAによれば、このプロセスは技術的な問題や天候不良によって打ち上げが延期される実際のシナリオを模倣したもので、チームの対応能力を確認するために不可欠なステップとなります。
Artemis IIの打ち上げはいつ頃?
今回のWDRでは、コマンダーを務めるNASAのReid Wiseman宇宙飛行士らArtemis IIミッションのクルー4名は宇宙船に搭乗しませんが、当日のクルー搭乗に関連するタイムラインはリハーサルに組み込まれています。また、地上クルーによる宇宙船のハッチ閉鎖手順などの確認も行われます。
NASAは、WDR終了後に推進剤を排出し、得られたデータを精査した上でArtemis IIの正式な打ち上げ目標日を設定するとしています。現在は2026年3月の打ち上げ機会を見据えているとしており、安全基準などの条件を満たすための最終調整を進めていく方針です。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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