ユナイテッド・ローンチ・アライアンス社は18日、米軍の通信を担う人工衛星AEHF-3を搭載したアトラスV 531ロケットを打ち上げた。AEHF衛星は現時点で全3機の打ち上げが計画されており、ひとまず今回の打ち上げをもって、AEHFは一応の完成を見たことになる。

AEHF-3を搭載したアトラスV 531は、アメリカ東部夏時間9月18日4時10分(日本時間同日17時10分)、アメリカ・フロリダ州にあるケープ・カナベラル空軍ステーションのSLC-41から離昇、約51分後に衛星を分離し、打ち上げは成功した。

AEHF-3はアメリカ空軍によって運用される軍用の通信衛星で、これまでアメリカ各軍の通信を担ってきたミルスター衛星を更新するため、現在配備が進められている。ミルスターよりも回線速度や接続可能数が大幅に向上しており、軍事目的であることから高い機密性(盗聴・傍受のされにくさ)も持ち、また核戦争の中でも運用できるほどの能力を持っているとされる。AEHFとはAdvanced Extreme High Frequency(先進的なミリ波(衛星))の頭文字から取ってつけられた衛星で、名前のとおりミリ波(EHF帯)を使用した通信を行う。

開発と製造はロッキード・マーティン社とノースロップ・グラマン社が担当し、打ち上げ時の質量は6,168kg、設計寿命は約14年が予定されている。

AEHF衛星の1号機は2011年8月14日に、また2号機は2012年5月4日に打ち上げられており、今回が3号機となる。当初の計画では全6機のAEHF衛星が配備される予定だったが、その後3機に削られ、以降は後継計画であるトランスフォーメーショナル・サテライト・コミュニケーションズ・システム(TSAT)に移行する計画に変更された。しかし2009年にTSAT計画が中止となり、臨時処置として2機のAEHF衛星が追加発注されたと言われている。

アトラスVはアメリカの衛星打ち上げ機のひとつ、アトラス・シリーズの最新型で、ロッキード・マーティン社によって開発されたロケットである。運用はボーイング社と共同設立されたユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)社が行っている。

アメリカ空軍は1990年代、EELV(Evolved Expendable Launch Vehicle)と呼ばれる、国防総省や米国政府系の衛星を打ち上げるための、新型の使い捨てロケットの開発プログラムを提示した。それに応える形でロッキード・マーティン社が開発したのがアトラスV、一方でボーイング社が開発したのがデルタIVである。

第1段には先代のアトラスIIIに引き続き、ロシア製の強力なロケットエンジンRD-180を採用。その一方で、アトラスIIIまでのアトラスシリーズの特徴であったバルーン・タンク構造は引き継がれなかった。第2段にはアメリカが長年運用し続けてきた上段であるセントールを採用している。また必要に応じて固体ロケットブースターを1基から5基まで、1基単位で装着することができる。

今回打ち上げに使われたアトラスVは531構成で、これは直径5mの衛星フェアリング、3基のストラップ・オン・ブースター、セントール上段のRL-10A4-2が1基ということを意味している。アトラスVの打ち上げは今回で40機目となり、2007年に一度予定より低い軌道に衛星を投入してしまった以外は、おおむね安定した成功を続けている。

 

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