地球の周りを飛んでいる物体を検知するために、米空軍が運用している巨大なレーダー群、通称スペース・フェンスが、予算削減により今年10月1日で閉鎖されることとなった。8月13日、米空軍が発表した。

このシステムは正式名称を空軍宇宙監視システム(Air Force Space Surveillance System)といい、カリフォルニア州からジョージア州、つまりアメリカ南部の西端から東端にかけて、ほぼ一列に全9基のレーダー施設が設置されており、そのうち3基の発信施設から宇宙空間に向けてレーダー波を発信し、6基の受信施設がその反射を捉え、軌道上の物体を検出する。この仕組みがあたかも宇宙に立てられたフェンス、それも北アメリカ大陸の端から端までをまるまる使った長大なフェンスのようであることから、スペース・フェンスと呼ばれている。

スペース・フェンスは米戦略軍が運用する宇宙監視ネットワークと呼ばれる、複数のレーダーや望遠鏡からなる宇宙の監視システムの一部として運用されている。スペース・フェンス自体は、そのフェンスの中を通過する物体を検出できるのであって、追跡はできない。したがって追跡は、宇宙監視ネットワークを構成している他の施設に任せることになるが、その反面、未発見の物体を検出することができる点で優位性がある。

スペース・フェンスは1961年に造られ、当初は米海軍によって運用されており、2004年10月1日に米空軍へ移管された。運用停止により、年間約1400万米ドルが節約できるとされている。

なお、スペース・フェンスがなくとも、宇宙監視ネットワークは機能を維持でき、また米空軍もフロリダ州のエグリン空軍基地と、ノースダコタ州にあるキャバリア空軍ステーションに宇宙空間の物体や弾道ミサイルの飛来を検知するための大きなレーダー設備を持っており、若干の修正を加えることでスペース・フェンスの機能を代替できる上、検知の精度も向上できるとしている。

また新しいスペース・フェンスとして、南太平洋のマーシャル諸島などに2基のレーダー施設を建設する計画が以前から進められており、2017年にも稼動する予定だ。この新スペース・フェンスが完成すれば、現在のスペース・フェンスよりも、より高い高度にある、より小さな物体をも検知することが可能となるとされている。

 

■Air Force Space Command discontinues space surveillance system