アメリカの民間宇宙企業SpaceX(スペースX)は現地時間2024年5月4日、同社が新たに開発した船外活動(EVA)用の宇宙服を発表しました。この宇宙服は2024年夏以降に実施される民間の有人宇宙飛行ミッション「Polaris Dawn(ポラリス・ドーン)」で初めて使用される予定です。【最終更新:2024年5月7日16時台】

【▲ スペースXが公開した船外活動(EVA)用宇宙服(動画)】
(Credit: SpaceX)

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今回発表されたEVA用宇宙服はスペースXの有人宇宙船「Crew Dragon(クルードラゴン)」で使用されている船内用宇宙服から発展したもので、動きやすさを重視して開発されました。新しいEVA用宇宙服は船内用宇宙服も兼ねていて、宇宙飛行士は同じ宇宙服を船内と船外の両方で使用することができます。

【▲ スペースXのウェブサイトに掲載されている船外活動(EVA)用宇宙服の全身像。各部分の解説も示されている(Credit: SpaceX)】
【▲ スペースXのウェブサイトに掲載されている船外活動(EVA)用宇宙服の全身像。各部分の解説も示されている(Credit: SpaceX)】

スペースXによると、ヘルメットには船外活動時に宇宙服の圧力・温度・湿度などを表示するヘッドアップディスプレイ(HUD)が組み込まれている他に、バイザー部分は断熱・遮光用のコーティングが施されています。胴体や四肢の部分には伸縮性のある難燃素材や繊維ベースの断熱素材を採用。ブーツは同社の「Falcon 9(ファルコン9)」ロケットのインターステージ(1段目と2段目を接続する部分)や、ドラゴン宇宙船のトランク(カプセル後方の非与圧部分)に使用されている断熱素材で作られています。

【▲ スペースXの船外活動(EVA)用宇宙服を着用した「ポラリス・ドーン」ミッションのクルー。ポラリスプログラムの公式Xアカウントから引用(Credit: Polaris)】
【▲ スペースXの船外活動(EVA)用宇宙服を着用した「ポラリス・ドーン」ミッションのクルー。ポラリスプログラムの公式Xアカウントから引用(Credit: Polaris)】

前述の通り、このEVA用宇宙服は民間の宇宙飛行ミッション「ポラリス・ドーン」で初めて使用される予定です。ポラリス・ドーンは実業家のJared Issacman(ジャレッド・アイザックマン)さんが率いる5日間のミッションで、4名のクルーがクルードラゴン宇宙船に搭乗し、高度約700kmで史上初の商業船外活動を行う計画です。クルードラゴンには国際宇宙ステーション(ISS)に備わっているようなエアロックは存在せず、船外活動時には船内全体の空気を一旦排出する必要があることから、クルーは全員がEVA用宇宙服を着用することになります。

【▲ スペースXの船外活動(EVA)用宇宙服を着用した「ポラリス・ドーン」ミッションのクルー。ポラリスプログラムの公式Xアカウントから引用(Credit: Polaris)】
【▲ スペースXの船外活動(EVA)用宇宙服を着用した「ポラリス・ドーン」ミッションのクルー。ポラリスプログラムの公式Xアカウントから引用(Credit: Polaris)】

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スペースXのクルードラゴン宇宙船はアメリカ航空宇宙局(NASA)などの宇宙飛行士がISSに長期滞在するための定期的なミッションをはじめ、民間主導のISS滞在ミッションや、クルードラゴン単独での地球低軌道ミッションにも使用されています。今回新たにEVA用宇宙服が完成したことで、今後は民間でも船外活動をともなう宇宙飛行ミッションが行われるようになるかもしれません。

 

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文・編集/sorae編集部

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