6月28日に起きた、ファルコン9ロケットの打ち上げ失敗について、米スペースX社は7月20日、ロケットの第2段タンク内にある、ヘリウム・タンクを固定する支柱が破損したことが原因である可能性が高いとする初期調査結果を発表した。
ファルコン9は米東部夏時間2015年6月28日10時21分(日本時間2015年6月28日23時21分)、フロリダ州にあるケープ・カナヴェラル空軍基地から打ち上げられた。しかし離昇から2分19秒(139秒)後、高度約40kmを秒速約1kmで飛行中に突如として機体が分解し、打ち上げは失敗した。
同社のイーロン・マスクCEOは、20日に開催した記者会見の中で「まだ調査は完全ではないが」と前置きした上で、ロケットの第2段液体酸素タンク内にある、高圧のヘリウム・タンクを固定している金属製の支柱が破損したことが原因である可能性が高いと述べた。このヘリウムは、推進剤タンクを加圧して中の推進剤を押し出す役目と、タンクの構造を保つ役目も持っている。
失敗の直後、マスク氏はTwitterに「ロケットから送られてきたデータによると、事故の直前に第2段の液体酸素タンクの圧力が過剰に上がっていたことを示している」と投稿していた。マスク氏によると、おそらくはヘリウム・タンクを固定している支柱が折れ、固定がなくなったヘリウム・タンクは、水に沈めたビーチ・ボールのように液体酸素の中を浮かび上がり、そして表面でヘリウムを放出。その結果、液体酸素タンク内の圧力が急激に上昇し、破裂したと考えられるという。この間わずか0.893秒であったとされる。
ヘリウム・タンクの支柱は、1万ポンドの過重に耐えられるように設計されていたはずが、2000ポンドで破損したことになるという。ただ、組み立て時に確認のために撮影された写真からは、傷や損傷は認められなかったという。
この支柱はある特定の企業が製造したもので、同種の支柱はファルコン9に中で数百個ほど使われており、これまでの打ち上げの中で、累計数千個も飛行した実績があることになる。しかし今回の事故を受けて、この支柱の使用を止め、またハードウェアの品質検査をより強化するとしている。これにより打ち上げコストは上昇するものの、打ち上げ価格には影響はないようにするとしている。
同社では、あくまでこれは予備的な結論であり、現在もまだ調査は進行中としているが、今年の秋にもファルコン9の打ち上げを再開したいとし、2015年中に予定していた打ち上げも、年末までにすべて完遂したいとしている。
また「今回の失敗は遺憾ではあるが、今回の調査によって、より安全で、より信頼性の高いロケットを造りだすことができる。また2017年に予定している有人宇宙船の打ち上げもより一層安全になる」としている。
発表ではまた、ロケットに搭載されていたドラゴン補給船が、ロケットの破壊に耐えたことも明らかにされた。マスク氏によると、もしドラゴンのパラシュートが開いていれば、海上に軟着水し、回収もできただろうとのことだが、このような事故が起きた場合にパラシュートが開くようには設計されていなかったため、それは叶わなかった。マスク氏はこれを受け、今回のような場合にパラシュートを開くことができるよう、ソフトウェアを改良するとしている。
■CRS-7 Investigation Update | SpaceX
http://www.spacex.com/news/2015/07/20/crs-7-investigation-update