宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2024年2月1日14時頃、X(旧Twitter)のSLIMプロジェクト公式アカウントにて、小型月着陸実証機「SLIM」が休眠状態に入ったことを明らかにしました。SLIMは月の過酷な夜に耐えられるようには設計されていないものの、JAXAは太陽電池に再び太陽光が当たるようになる2月中旬以降の運用に再挑戦するとしています。【最終更新:2024年2月1日17時台】
SLIMは日本時間2024年1月20日0時20分頃に日本の探査機として初めて月面へ軟着陸することに成功したものの、2基搭載されているメインエンジンのうち1基で着陸直前に生じたトラブルによって接地時の水平方向の速度や姿勢が想定外となり、太陽電池を西に向けた状態で安定してしまいました。太陽光が東から当たっていた着陸当時は太陽電池の発電が確認できなかったため、JAXAは着陸から約2時間半後にSLIMの電源を一時オフにしていました。
その後、太陽光が西から当たるようになったことで2024年1月28日以降はSLIMとの通信が再確立され、「マルチバンド分光カメラ(MBC)」による岩の観測が進められていました。観測対象の岩は着陸直後に実施された低解像度スキャンのデータから6つが選ばれ、「トイプードル」「柴犬」といった犬の名前が愛称として付けられていました。運用再開後はここに「土佐犬」「セントバーナード」など少なくとも5つが新たに追加され、高解像度のマルチバンド観測が実施されています。
JAXAによると、日本時間2024年1月30日~31日の運用をもってSLIMは休眠状態に入りました。SLIMは太陽電池から電力を得ているため、着陸地点が夜の間は活動することができません。また、SLIMは約マイナス170℃まで温度が下がる月の夜を乗り越えるようには設計されておらず、夜の間に電子機器が損傷する可能性もあります。月の昼夜は2週間ずつ続くため、JAXAはSLIMの太陽電池に再び太陽光が当たるようになる2月中旬以降の運用に再挑戦するということです。
こちらは休眠前のSLIMの航法カメラで最後に撮影された月面の様子です。先に掲載したLEV-2(SORA-Q)やMBCで撮影した画像と比較して、太陽光の当たらない部分が増えていることがわかります。SLIMプロジェクトの公式ウェブサイトによると、着陸後の観測運用を含め、休眠状態に入るまでの一連の電源系の動作は正常だったということです。
【2024年2月1日17時更新】JAXA宇宙科学研究所(ISAS)からSLIMの電力回復後にMBCで取得された画像が追加公開されたため、記事中の画像を一部差し替えました。
SLIMについては新しい情報が発表され次第お伝えします。
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Source
- 小型月着陸実証機SLIM (X, fka Twitter)
- JAXA - 小型月着陸実証機 SLIM
- JAXA/ISAS - 小型月着陸実証機(SLIM)搭載マルチバンド分光カメラ(MBC)による 10バンド分光撮像の成功について
文/sorae編集部 速報班