宇宙航空研究開発機構(JAXA)は日本時間2024年1月20日2時10分、小型月着陸実証機「SLIM」の月着陸を確認したと発表しました。月面への着陸に成功したのは日本では初めて、世界では旧ソ連・アメリカ・中国・インドに次いで5か国目となります。ただし、探査機の太陽電池は電力を発生していない状態になっており、発表時点でSLIMはバッテリーに残った電力のみで稼働している状態だということです。【最終更新:2024年1月20日2時台】
SLIMは月面へのピンポイント着陸技術を実証するために開発された無人探査機です。JAXAのX線分光撮像衛星「XRISM」とともに「H-IIA」ロケット47号機に相乗りする形で2023年9月7日に種子島宇宙センターから打ち上げられ、同年12月25日に月周回軌道へ投入。2024年1月10日には着陸降下準備フェーズへ移行することが決定され、日本時間2024年1月19日22時40分には着陸降下に備えて高度約600×15kmの楕円軌道に投入されていました。
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JAXAによると、日本時間2024年1月20日0時0分頃に着陸降下を開始したSLIMは、日本時間2024年1月20日0時20分頃に月面へ着陸したことが確認されました。ただし、前述の通り探査機の太陽電池は電力を発生していない状態になっており、発表時点でSLIMはバッテリーに残っている電力のみで稼働しています。着陸後に電波を受信できていること、太陽電池だけが損傷するような状況は考えにくいといった理由から、SLIMは軟着陸(ソフトランディング)に成功したものの、機体に固定されている太陽電池の向きが想定とは違う方向を向くような姿勢になってしまっているものとみられます。
バッテリーの電力は数時間持つとみられており、JAXAはヒーターの電源を切るなど延命措置を施した上で、今後の分析に役立てられる航法データの取得や、岩石の組成を測定するために搭載されている「マルチバンド分光カメラ(MBC)」の稼働を優先しているということです。SLIMがどのような姿勢で接地しているのかはまだ確認されておらず、姿勢次第では今後太陽電池に太陽光が入射して電力が発生するようになる可能性もあるようです。
また、SLIMに搭載されていた小型の探査ロボット「LEV-1」および「LEV-2(愛称:SORA-Q)」は正常に分離された模様です。探査ロボットのカメラでSLIMを撮影することに成功していれば、画像を取得することでSLIMがどのような状態になっているのかを確認できる可能性もあります。
ミッションの概要については以下の関連記事もご覧下さい。なお、SLIMがピンポイント着陸に成功したかどうかはデータを分析した後、着陸から1か月後程度を目処に改めて発表されることがあらかじめ決まっています。
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【追記:2024年1月22日14時台】宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2024年1月22日にX(旧Twitter)のSLIMプロジェクト公式アカウントにて、SLIMのバッテリーを日本時間2024年1月20日2時57分に所定の手順に従って切り離し、探査機の電源がオフになったことを明らかにしました。これは過放電でバッテリーの再起動が阻害されるのを防ぐための措置で、切り離し時点でのバッテリー残量は12パーセントとされています。バッテリー切り離しの時点で太陽電池の発電は確認されていなかったものの、取得されたデータによれば探査機に固定されている太陽電池が西を向いていることから、今後太陽光が西から当たるようになれば発電できる可能性があるということです。
また、着陸からバッテリーを切り離すまでの約2時間半の間に、着陸降下中や月面で取得された技術データおよび画像データの地球への送信が完了したとされています。現在はデータの詳細な解析が進められており、SLIMの状況や現段階での成果については今週中に公表するべく準備を進めているということです。
SLIMについては新しい情報が発表され次第お伝えします。
Source
- JAXA - 小型月着陸実証機(SLIM)の月面着陸の結果について
- JAXA - 小型月着陸実証機SLIM ピンポイント月着陸ライブ・記者会見(YouTube)
- 小型月着陸実証機SLIM (X, fka Twitter)
文/sorae編集部 速報班